この連載では、拙著『入社10年分の思考スキルが3時間で学べる』で紹介したキーワードやフレームワークなどを利用しながら、最新の話題を題材にして、「考える力」を高めるコツを伝授する。
「ポケモンGO」より注目すべきゲームソフト
「イカ」の話をしたい。任天堂のイカの話だ。
いま任天堂というと「ポケモンGO」やiPhone向けの「スーパーマリオ」が話題だ。まるでスマホ対応が任天堂の最重要戦略のように思われがちだが、そこにばかり目が行っては任天堂の底力に気がつかない。
確かに、ゲームのプラットフォームは、ゲーム専用機からスマホへとシフトしている。しかしスマホ時代にキャッチアップするのは、戦略オプションのひとつであるが、すべてではない。
任天堂の本丸事業は「DS」や「Wii U」といったハードの販売。継続して売り続けるため、人の心を掴むソフトが必要になる。
ソフトとハードは互いに「代替の利かない」関係が理想的。そこに好循環ができれば、双方ともに売れていくネットワーク効果(※1)が生じる。
ネットワーク効果(※1)
ネットワーク効果はプラットフォーム型のビジネスを理解するうえで重要な概念だ。要は、ネットワークの利用者が増えていくときのメカニズムのことだ。
電話を例に考えてみよう。電話は、使っている人が多いから価値がある。もし、電話を使っているのが自分だけならば、まったくの無価値だ。小難しく言うと、利用者が拡大することで、利用者の便益が増加する、ということ。それがネットワーク効果だ。
ネットワーク効果の特徴は、ある規模を超えた場合の、需要の爆発的な成長が挙げられる。利用者の数が増えれば増えるほど、ますます多くの利用者が価値を感じてそれを採用し、一気に利用者が増える。SNSはその典型だ。
ここまで説明してきた効果は「直接的ネットワーク効果」と呼ばれる。これに対して、「間接的ネットワーク効果」は、膨大な参加者の数を目当てに、別のネットワークが開くイメージだ。
例えば家庭用ゲーム機の場合、専用のハードが普及すると、次にソフトを開発する企業群がヒット作を狙いしのぎを削る。間接的ネットワーク効果が働くと、元のネットワークはさらに盛り上がる。人気ソフトがハード機器の売上拡大の起爆剤になるように、相互が影響し合うことでネットワーク効果はまた指数関数的に増強される。
一方で、ネットワーク効果は移ろいやすい。ピークを過ぎたネットワークは、他のネットワークに利用者を奪われていく。
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