夜間のオレキシン分泌を防ぐには?

 しかし、いずれにしても薬物に頼るのは好ましくない。日常生活で「夜間のオレキシン分泌」を防ぎ、スムーズに眠るコツはないだろうか。櫻井さんに教えてもらった方法を紹介しよう。


1. ストレスをためない

 ストレスがあると眠れなくなるのは決して気のせいではない。「ストレスを感じると視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモンが作られることで、オレキシンも活発に作られるようになります」と櫻井さんは説明する。

 ストレス解消に有効なのは気分転換。家に帰ったら好きな本を読んだり音楽を聴いたりして、仕事のことを忘れよう。スポーツで汗を流す、親しい友人と会う、カラオケに行く、といった方法もいいだろう。酒やタバコなど体に負担をかける方法は避けて、上手にストレスを解消してほしい。


2. 寝る前に感情を刺激しない

 「喜びや恐怖など、強い感情もオレキシンの分泌を促進します」と櫻井さん。就寝前に好きなことをやるのはストレス解消になるとはいえ、あまり刺激の強い映画や興奮を招くゲームはお勧めできない。メールも意外と感情を刺激することが多いので、急ぐ必要がなければ翌日にしておこう。


3. 朝起きたら太陽の光を浴びる

 通常、オレキシンは昼間にたくさん作られ、夜になると作られなくなっていく。夜間のオレキシン分泌を抑え、快眠を導くためには、体内時計を整えることも大切だ。櫻井さんは「ストレスや感情に比べれば、体内時計ははるかにコントロールしやすい」と話す。

 最も有効な方法は、毎朝同じ時刻に起き、起きたら太陽の光を浴びること。「光を浴びてから16時間後に眠れる体勢が整う」と櫻井さん。なお、夕方以降に強い光を浴びると体内時計が後ろにずれていく。特にLEDの光はブルーライトが多く含まれ、体内時計への影響が強い。夜になったら部屋の照明は暗めにして、パソコンやスマホもなるべく目にしないほうがいいだろう。


4. 規則正しい生活サイクルをキープ

 体内時計を整えるには、何といっても生活サイクルを規則正しくすることだ。就寝時刻は日によって多少ずれてもいいが、起床時刻は常に一定にしよう。

 前回も触れたように、休日の朝寝坊はせっかく整った体内時計を台無しにしてしまうので、休日もできるだけ起床時刻を変えないこと。眠かったら昼寝で補うことにして、せいぜい1時間以内の寝坊に留めよう。また、「毎日同じ時刻に食事を取ることも体内時計を整える上では重要です」と櫻井さんは話す。

(図版:ランタ・デザイン)

櫻井武(さくらい たけし)さん
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 副機構長
櫻井武(さくらい たけし)さん 1964年生まれ。筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学院人間総合科学研究科准教授、金沢大学医薬保健学総合研究科教授などを経て、2016年より筑波大学医学医療系教授。日本睡眠学会評議員。著書に『睡眠の科学・改訂新版』(講談社)、『<眠り>を巡るミステリー』(NHK出版)、『最新の睡眠科学が証明する 必ず眠れるとっておきの秘訣!』(山と渓谷社)など。