睡眠リバウンドは3時間以内が目安

 気になる人は、ぜひ週末に試してみよう。光や音のシャットアウトに不安があれば、思い切ってホテルに泊まってもいいだろう。部屋を真っ暗にして、気が済むまでとことん眠り続けてみるのだ。

 なお、起床時刻が大幅にずれると体内時計が乱れてしまうので、就寝時刻を早めたほうがいい。できれば普段より1~2時間早く布団に入ろう。

 「実験に参加したのは健康な若者たちでしたが、それでも初日は普段より3時間も睡眠時間が長くなった。この3時間が目安になります。睡眠時間がこれ以上長くなるようであれば、そうとう潜在的睡眠不足がたまっている証拠です」(三島部長)

 例えば普段が6時間なのに10時間眠った場合、睡眠リバウンドは4時間。自分では気がつかなくても、肉体はかなり睡眠不足を感じていたことになる。前述したように、慢性的な睡眠不足は生活習慣病のリスクを高くする。「3時間以上の睡眠リバウンドに加えて、血糖値や血圧の異常を指摘されている人は早急に手を打つ必要がある」(三島部長)という。

体を壊す前に行動の「断捨離」を

 まずは眠気に敏感になることだ。睡眠不足をあまり苦にしない人もいるが、肉体がタフなわけではなく、神経が鈍いだけかもしれない。「知覚神経に異常があって、まったく痛みを感じない人がごくまれにいる。生きていく上で非常に危険な状態です」と三島部長。実験に参加した若者たちは、昼間に眠気を感じていなかった。はっきり眠気を感じるような状態なら、睡眠不足に違いない。

 仕事などでどうしても夜の睡眠時間が取れない人は、応急処置として昼間に10~20分の仮眠を取ろう。帰りの電車で眠ると夜の睡眠が浅くなるが、朝や昼など早い時間帯で20分以内の仮眠を取るなら影響は少ない。

 「夜の睡眠時には副交感神経が優位になって血圧が下がる。昼間の仮眠にそのような効果は期待できないので生活習慣病の予防にはなりませんが、眠気はある程度なくなるはずです。眠気を感じていたら、仕事のミスを防ぐためにも仮眠をお勧めします」(三島部長)

 NHKの生活時間調査によると、この70年間で日本人の睡眠時間は約1時間短くなっている。昔も今も1日は24時間しかないが、現代人はやらなければならないこと、やりたいことが多過ぎる。週末のドカ寝テストで潜在的睡眠不足が分かったら、「体を壊す前に、何かやるのを諦めて睡眠時間に回すべき」と三島部長は助言する。

 日本人はつい睡眠時間を犠牲にしがちだが、何をするにしても体が資本。潜在的睡眠不足がたまっていたら、行動の「断捨離」も必要だ。

三島和夫(みしま かずお)さん
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部長
三島和夫(みしま かずお)さん 1963年生まれ。秋田大学医学部卒業。同医学部精神科学講座助教授、米スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授などを経て、2006年より現職。日本睡眠学会理事。著書に『不眠の悩みを解消する本』(法研)、『朝型勤務がダメな理由 あなたの睡眠を改善する最新知識』(日経ナショナルジオグラフィック社)など。