7時間半でも十分ではなかった!

 三島部長らは平均23.4歳の男性15人を対象に、興味深い実験を行った。9日間にわたって、夜に騒音や光をシャットアウトした部屋(暗室)で12時間横になってもらい、目覚まし時計を使わずに目覚める、理想の睡眠時間を調べたのだ。

 実験に参加した若者たちには、まず自宅での睡眠時間を3週間調べてもらった。結果は平均7時間22分。「平成27年国民健康・栄養調査」によると平均睡眠時間が6時間未満の人は39.5%もいた。三島部長によると、加齢により必要な睡眠時間は短くなっていく。今回の実験モニターは20代なので、比較的長めの睡眠が必要とはいえ、約7時間半という睡眠時間はしっかり寝られているほうといえる。

 それでも強制的に12時間横になってもらうと、初日の睡眠時間は平均10時間35分。翌日から徐々に時間は短くなって、4日目以降は安定し、最終的な睡眠時間は平均8時間25分に落ち着いた。つまり理想の睡眠時間から見ると、7時間半でも1日1時間ずつ睡眠不足がたまっていたことになる。

 こうした日々の睡眠不足の積み重ねによって、暗室での睡眠時間が通常より長くなった分を“睡眠リバウンド”という。この睡眠リバウンドが長いほど、日々の睡眠の不足度が高いことを意味する。

 「7時間半眠っていた実験前も、彼らは日中に眠気など感じていなかった。ところが実験前後の血液を調べると、睡眠を十分にとれた実験後のほうが健康的であることが分かりました。この結果から、通常は自覚がない睡眠不足。つまり、“潜在的睡眠不足”の状態と結論付けました」と三島部長は話す。

 例えば空腹時血糖値は実験前が92.1mg/dLだったのが9日目には90.4mg/dLに。正常値の範囲内だが、有意に下がった。同じく、インスリン分泌能(HOMA-β)も上昇。副腎皮質刺激ホルモンコルチゾールの血中濃度は低下し、感じているストレスが減ったことも確認された(下グラフ)。

9日間のたっぷり睡眠で血液の健康度が改善
睡眠を十分にとる実験の実施後のほうが、血糖値が下がり、ストレスが減ることが分かった。(Sci Rep. 2016 Oct 24;6:35812)
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 実験には、さらに続きがある。9日間の理想的睡眠(平均8時間25分)を取った直後、一晩断眠(完徹)してもらったのだ。翌日に再び12時間横になってもらうと、もちろん睡眠時間は8時間半を超えたが、実験初日の10時間35分には届かなかったという。つまり、毎日1時間の潜在的睡眠不足は、一晩の完徹よりも長い睡眠リバウンドをもたらし、体へのダメージが大きいということだ。