細胞同士を繋いでいるセラミドを保湿剤に

 角質層は、死んだ角質細胞が煉瓦のように積み重なってできているが、煉瓦同士をくっつけるセメントのような物質があることも分かってきた。皮膚科学では角質細胞間脂質と呼ばれるもので、その主成分が細胞間脂質であるセラミドだ。セラミドの分子は二重膜構造をつくり、その中にたくさんの水分を抱え込むため、角質層の保湿に重要な役割を果たしていると考えられるようになった。

 セラミドの不足は、肌トラブルの原因になる。例えば、セラミドは、体内でフィラグリンという物質から合成されるが、「アトピー性皮膚炎ではその遺伝子の30%ほどに変異がある」(菊池さん)という。また、乾燥肌、荒れ肌、老人性乾皮症などの場合でも、角質層のセラミドの機能が著しく低下していることが分かっている。

 セラミドは、NMFと異なり細胞の外にあるので、皮膚にクリームなどを塗って補充することができる。ドラッグストアなどで市販の配合クリームを購入すればいいだろう。

常在菌が質の良い皮脂膜を作り出す

 そして、肌の保湿を守る、もう一つの要素が皮脂腺から分泌される皮脂だ。皮脂は、角質層の表面にベールのような皮脂膜をつくり、角質層からの水分の蒸散などを防いでいる。一般に、中高年男性は皮脂が多いと思われがちだが、重要なのは量ではなく質だ。菊池さんは「肌表面は、酸性度やアルカリ度を示す値が約pH6(ペーハー6)の弱酸性がベスト。この値が酸性に振れてもアルカリに振れても、皮脂膜の機能が低下し、肌荒れや肌の乾燥につながる」と話す。

 皮脂がアルカリ性に傾く原因はいくつかあるが、一つはビタミンB2、B6の不足。また、汗の量が減ると、汗のなかの塩類(カルシウム、ナトリウム、カリウムなど)が増え、肌をアルカリ性にしてしまう。ビタミン不足にならないように気を付けるとともに、適度な運動習慣で新陳代謝を良くして、冬でも水のようなサラサラの汗をかくようにすると肌のコンディションが良くなる。

 また、菊池さんは「皮脂膜のコンディションを保つのに重要な役割を果たしているのが、実は皮膚表面の常在菌であることも分かってきた」と話す。皮膚表面にはたくさんの常在菌がいるが、知っておきたいのは4種類。まず、いわば「善玉菌」の代表と言えるのが、表皮ブドウ球菌だ。表皮ブドウ球菌は、皮膚に対して通常は悪さをしないばかりか、皮脂腺から分泌されるトリグリセライドという物質を脂肪酸やグリセリンに分解することによって、弱酸性の皮膚を保つとともに保湿効果を高める役割がある。

 また、ニキビの原因となるアクネ菌は「悪玉菌」と考えられがちだが、あまり増えすぎなければ皮脂を弱酸性に保つ働きをしてくれる「善玉菌」の面もある。これに対して「悪玉菌」の代表なのが黄色ブドウ球菌やマラセチア菌だ。肌がアルカリ性に傾くと増殖しはじめ、乾燥、炎症、アレルギーなどさまざまな肌荒れの原因になる。