iPS細胞を使った髪の再生医療も

 国内で1000万人の成人男子が悩んでいるAGA。しかし、坪井教授は「やがてAGAで悩まない日が来る」と言い放つ。それは、いま世界の皮膚科医や再生医療研究者が取り組んでいる毛髪の再生医療の実用化が期待されているからだ。

 再生医療にはいくつかの段階があるが、現在行われている自毛植毛も広い意味の再生医療だという。これは後頭部などDHTの影響を受けにくい部分の毛髪を毛根ごと取ってきて、額などに移植するというもの。分布は変わるが頭部にある毛の総本数は変わらない医療だ。

 それに対して、坪井教授らの研究グループが進めているのは、後頭部などの毛髪の深い部分(真皮組織)にある間葉系細胞を取り出し培養するというもの。それを額や頭頂部の細く弱った毛髪の毛包に注入。毛包を活性化することで、毛を太く長くするというものだ。これから3年間、臨床研究を行うという。

 このほか毛髪に関する再生医療には、皮膚組織やiPS細胞を使って毛を作り出し、それを頭部に移植するといった方法も検討されている。もしかしたら10年後には、AGAなんて過去の話になっているのかもしれない。

坪井 良治(つぼい りょうじ)さん
東京医科大学病院 皮膚科 教授
坪井 良治(つぼい りょうじ)さん 1980年防衛医科大学校卒業。順天堂大学大学院修了後、米国・ニューヨーク大学医学部(細胞生物学)留学を経て、順天堂大学医学部皮膚科講師、助教授を務めた。著書に、『脱毛症治療の新戦略』(中山書店、共著)などがある。