1年の薬物治療で6割の人が改善

 AGAを改善しようと、これまで様々な方法が考えられてきた。頭皮の血行を促進する育毛剤から、電気や光を当てるものまでさまざまだが、現在では世界的な臨床試験で発毛効果の認められた医薬品による治療を皮膚科で受けるのが中心だ。

 その一つが塗り薬である「ミノキシジル」(商品名:リアップ)だ。もともと、高血圧の薬を開発する段階で副作用として発見された、多毛作用を利用したものだという。AGAの発症メカニズムに関わる医薬品ではなく、前頭部、頭頂部以外の薄毛にも一定の効果が得られる。そのため女性を対象とした医薬品も開発されている。

 次に、飲み薬として登場したのが「フィナステリド」(商品名:プロペシア)で、こちらはAGAの発症メカニズムに直接作用する医薬品だ。フィナステリドは、毛包のなかで5α還元酵素の働きを阻害し、脱毛を引き起こすジヒドロテストステロンの作用を抑える働きがある。だから、男性ホルモンに感受性のある毛に効果がある。坪井教授は「ヒゲなどが濃く、額、頭頂部が薄くなるといった、典型的なAGAの人ほど効果が期待できる」と話す。

 ミノキシジルとフィナステリドは、作用メカニズムが全く異なるので相乗効果も期待できる。アメリカでは、男性の軽症から中等度のAGA患者の治療法として、フィナステリド内服と、ミノキシジル5%外用薬の併用療法が一般的になっているという。

 では、こうした薬物治療はどれぐらい効果があるのだろうか。発毛効果はなかなか実感しにくいのは確かだ。髪は1カ月に1センチしか伸びないので、6カ月経ったときには前の自分の状態を忘れてしまうからだ。効果が出ているのにもかかわらず、それを短期間で実感しにくいことから、ミノキシジルなどの使用を途中で止めてしまう人も多いという。

 ただ、科学的に分析すれば効果は明らかだという。坪井教授は「効果は個人差はあるが、多くの人で脱毛症の進行が止まり、毛が生えてくる」と話す。例えば、プロペシアの場合は、1年続けると58%、3年続けると78%の人が、自分でも分かるぐらい脱毛が改善するという。