まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。
「おれ、もしかしたらMかも」「おれはOだ。どうしよう」…。男は30代を過ぎると洗面所でそんな会話が交わされるようになる。東京医科大学皮膚科の坪井良治教授によれば、日本人男性では30代で約10%、60代で約50%、平均すると成人男性の30%が男性型脱毛症(AGA)を気にしているという。
AGAは、主に前頭部と頭頂部の頭髪が柔らかく細くなって薄くなる。思春期以降に始まり、徐々に進行して40代で誰の目にも明らかな状態になってしまう。前頭部からMの字のように薄毛になるのがM型、つむじ周りの頭頂部が薄くなるのがO型だ。
男性ホルモンの活性化が原因
AGAが「男性型」である理由は、男を男たらしめているホルモンが深く関与しているからである。主要な男性ホルモンであるテストステロンは、体内で「5α還元酵素」の働きによって、より活性が強いジヒドロテストステロン(DHT)に変化し、前立腺、精嚢(せいのう)などいくつかの臓器の機能に関わっている。
問題は、この5α還元酵素が、頭髪の根元(毛根)を包む「毛包」という部分でも働いているということ。坪井教授は「髪は2~6年かかって太く長くなり、3~4ヵ月の休止期を経て徐々に抜けていく。これが髪のサイクルだが、5α還元酵素が作り出したDHTが強く働くと、脱毛シグナルが出され早めに抜けてしまう」という。髪が育たないうちに抜けてしまうから、細い短い毛髪が多くなり、全体として薄毛が目立つようになる。そして、やがては完全に毛根が失われてしまう。これがAGAの発症メカニズムなのである。
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