ランナー膝と中高年ランナーの「ひざ痛」の違い

 「ランナー膝」という言葉がある。ランニングの際に、膝の外側が痛くなる症状のことだ。

 「ランニングで痛めたひざはみんなランナー膝だろ」と思っている人も多いと思うが、専門的にはちょっと違う。狭義のランナー膝は太ももの外側を覆っている長い靱帯(腸脛靭帯:ちょうけいじんたい)が、走り込むうちに膝の関節の外側の出っ張りとこすれて炎症を起こしたものだ。

 ただ秋山院長は「しっかりした体作りができた選手が走り込み過ぎたことによって起こる本来のランナー膝とは違い、中高年ランナーの場合は膝関節を取り囲んでいる靱帯にトラブルを起こしていることが多い」と話す。

 私たちの膝は、前後に伸ばしたり(伸展)曲げたり(屈曲)する運動だけでなく、ひざを内側および外側にひねる回旋運動を行う。これらの動きをサポートしているのが外側側副靱帯、内側側副靱帯、前十字靱帯、後十字靱帯だ。正しい走りでは、これらの靱帯への負担は少ないが、走り方が悪いと特定の靱帯に負担がかかり、強い痛みを生じることになる。

中高年が痛めやすいひざの靱帯
中高年が痛めやすいひざの靱帯
走り方が悪いと、外側側副靱帯、内側側副靱帯、前十字靱帯、後十字靱帯に負担がかかり、強い痛みを生じる。
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つま先が外を向き過ぎた着地はひざを痛める

 まずは膝関節に負担の少ない走りができているかをチェックしよう。人間が歩いたり走ったりするときの基本動作は以下のようになる。

(1)つま先を正面に向けながら踵(かかと)で着地する
(2)足底に加わる重心が、足裏の形状に沿って軽く外側にカーブを描くように移動
(3)最後は、親指で強く蹴り出す

 大事なのは、足を着地させる際のつま先の向きだ。秋山院長は「中高年ランナーはガニ股気味の人が多く、つま先が外に開きがち。そのままでは、うまく親指で蹴り出せないので、膝を曲げたときに関節を内側にひねる回旋運動が働いてしまい、それが外側側副靱帯、内側側副靱帯を痛めることにつながる」と解説する。

 歩き方、走り方にはクセがあるもの。先の3つのコツを踏まえて、普段から正しい歩き方を心がけよう。また、東京なら皇居周辺など、ランナーが集まる場所には着替えやシャワーの場所を提供するランニングステーションがある。走り方をトレーナーに相談できるクリニック・イベントも開催されているので、機会を見つけて自分のフォームをチェックしてもらうといいだろう。とくにO脚気味の人は、もともとつま先が外を向きやすく、フォームが崩れやすい。よくトレーナーと相談するといいだろう。

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