ギャンブル依存症は脳の病気か

 ギャンブル依存症というと「どうしようもなくギャンブルが好きな人」と、なにか特別な人のように思われる。しかし田中代表は「実際には、一般の人と同じように普通にギャンブルを楽しんでいた人々」と話す。しかし、自分でも気がつかないうちに、やめたくてもやめられないギャンブル依存症という病気を発症してしまったのである。

 田中代表は「WHO(世界保健機関)では、ギャンブル依存症を『治療すべき病気』と捉えている」と話す。それに対して、一般的には「人間性の問題で、意思の力によってなんとかできるはず」と考えられがちだ。そのため周囲の人々も、本人に対して「理論的に考えれば、ギャンブルで儲けることはできない」などと諭すことが多い。

 しかし、ギャンブル依存症の患者は、こうした理屈を十分承知した上で、それでも「今度勝てば、これまでの借金を返せる」と考えてしまう。しかも、最初のうちは味わえたギャンブルをやっているときの高揚感や多幸感が失われているにもかかわらず、強迫観念によりギャンブルを止められないのである。田中代表も「非常に苦しい思いをしながらも、ギャンブルを続けている人がほとんど」という。

 なぜ、こうした行動を繰り返すのか。ギャンブル依存症の臨床研究は、まだ始まったばかりだ。しかし、最近の研究では、繰り返しギャンブルを行っていくうちに、脳にさまざまな異変が起こると考えられ始めている。例えば、脳の働きを画像で分析するfMRI(機能的磁気共鳴映像装置)という装置を用いた研究では、ギャンブル依存症の患者は脳の前頭葉という部分の機能が明らかに低下。ギャンブル以外のことでは、脳がうまく働かない状態になっていることも明らかになっている(京都大学医学部、鶴身孝介助教など、「依存症の新しい展開 依存症の脳科学」、月刊精神科. 2015;26(4):247-251.)。

 そして、ギャンブル依存症は慢性疾患であり一度発症すると生涯完治はない。このことを専門家は「大根をたくあんにするのは簡単だが、たくあんを大根にはできない」と表現する。早め早めにギャンブル依存症に対処し、重症にしないことが重要なのだ。