70代、自分たちの終の住まいを探す

 さて、40代、50代、60代と、自分や家族の認知症と向き合うためのベースとなる知識を紹介してきた。そして、60代後半から70代になって、親の面倒を見終えた人達に考えてほしいのは自分や伴侶の認知症対策だ。日本の70代は、まだまだ元気で「自分が認知症になったときのことは考えたくない」という人も多いだろうが、いざ認知症になってしまうと、自分で判断することが難しくなる

 自分が認知症になったとき、どのような介護を受けたいのか。70代の始めには、しっかり考えておきたい。両親の面倒を見た経験も参考になるだろう。例えば、その選択肢の一つになるのが民間の「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」だ。さまざまなタイプの施設があるが、「年をとって家事が大変になった」というレベルの人から入れる施設も多い。もちろん介護サービスも充実しているほか、医療機関を併設して最後までみとってくれる施設も少なくない。まさに終の住まいといえるだろう。

 和田さんは「問題は費用がかかることだが、子供に残すものが少なくなる分、子供に迷惑をかけずにすむと考える人が増えてきた」と話す。また、かつては高額の入居金を必要とする施設も多かったが、最近では入居時の負担がほとんどないかわりに、月々の負担が大きい施設が増えてきた。「自分に合わなかったり、病状が変化したときなどに他の施設に移りやすくなった」(和田さん)という。

 70代までに決めておきたい、人生最後のライフプラン。和田さんは、最後に一つのアドバイスを送る。それは「60代のうちに趣味を探しておくこと」(和田さん)だ。ビジネスマンは、仕事一途で趣味らしいものを持たない人も多い。そのため、リタイア後に人付き合いがめっきり少なくなり、人生の目標を失ってしまう。それが認知症でもないのにボケたようになったり、認知症になった際の進行の原因にもなる。釣りやカラオケなど、手軽にできることでいいので、リタイア後の生活の軸になる何かを見つけてほしい。

和田秀樹(わだ ひでき)さん
和田秀樹 こころと体のクリニック 院長
和田秀樹(わだ ひでき)さん 精神科医。1960年生まれ。東京大学医学部卒、東京大学附属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。『テレビの大罪』(新潮新書)、『人は「感情」から老化する』(祥伝社新書)など著書は多数。