40代、親が70代のうちにコミュニケーションを
この「85歳」という年齢を節目にしてライフプランを立てるとき、40代、50代で最初に意識するのは親の年齢だろう。40代では、親がボケるということを、まだまだ意識しにくいが、和田さんはこの年代で心掛けてほしいことがあるという。それは、親が70代のうちから、親とよくコミュニケーションをとっておくこと。「長期間、会ったり話したりしていないと、親の変化に気付けなくなることもある。認知症は進行する病気であり、初期のうちに気付けば問題が深刻化する前に対処できる」と和田さんはアドバイスする。
では、認知症を初期のうちに発見するために重要なサインは何か。認知症のうち最も多いアルツハイマー病で重要なのは記憶障害だ。老化によるただの物忘れは、体験したことの一部を忘れている場合が多く、ヒントを与えると思い出すが、認知症の記憶障害は旅行などエピソードを丸ごと忘れてしまうことが多い。忘れてしまったことを本人が自覚しないのも認知症の特徴だ。こんな症状があれば、一度、老年科や精神科などで診てもらうといいだろう。
また、高齢者の記憶障害は認知症以外にうつ病が原因のことも多い。和田さんは「60代、70代の人であれば、認知症よりうつ病のほうが多い。高齢者のうつ病は、薬が比較的よく効くので治ることも多いし、数年間は老化をくいとめられることも多い」と指摘する。
50代、良い介護のための情報戦が始まる

そして50代。認知症に限らず、親の介護は突然やってくることも多い。親が急に倒れると、何から始めていいか分からずに気が動転してしまうこともある。だからこそ、親の年齢が80代に近づいた頃、一度は市町村の窓口「地域包括支援センター」で介護保険制度などに関する情報を収集しておくことが大切だ。
例えば、和田さんは「2000年から開始された介護保険制度は、一部課題は残っているが全体としては良い制度」という。これを十分に活用することが大切だ。受けられる介護サービスも訪問介護、訪問入浴など自宅に訪問して行われるサービスから、日帰りで施設に通い入浴や食事、健康維持や機能訓練などを行うデイサービス、自宅のバリアフリー化のためのリフォーム費用の支給など多岐に渡る。
ただ、こうした介護サービスの課題として、和田さんは「多くの人がたくさんの介護サービスを受けると、財政を圧迫してしまう。そのため行政からサービス内容が周知されていない傾向にある」と指摘。現状では、介護制度や支援サービスについて、たくさん情報を集めた人が得をする制度ともいえる。
そこで和田さんが重要だと指摘するのがケアマネージャー(介護支援専門員)の存在だ。ケアマネージャーは主治医などと連携して、保険・医療・福祉、その他の生活支援サービスなどの社会資源を活用。在宅か施設かにかかわらず、高齢者がどんな心身状態になっても途切れることなく、その人の生活を支援してくれる。「親が軽度の認知症と診断されたなら、早めに介護保険を申請する手続きを開始し、市町村などが推薦してくれるケアマネージャーから、よく相談に乗ってくれそうな人を選ぶといいだろう。
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