まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

製薬企業の開発部門に勤務する56歳。昨年、認知症を患っていた父を自宅でみとった。最後まで面倒を見られたのは誇らしくも思うが、妻には在宅介護で大変な苦労をかけてしまった。落ち着いた今になって考えるのは「他にもっといい方法があったのではないか」ということ。後悔しているのではない。今後、自分や妻が認知症になったとき、子供たちに苦労をかけたくないと思うからだ。最近では、若い頃と比べて体力の衰えを感じるし、記憶力も低下気味。夫婦どちらかがボケてしまう前に、どう対処したらいいのかを決めておきたい。これも「終活」の一つだよね。
(イラスト:川崎タカオ)
(イラスト:川崎タカオ)
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 人類史上最高の速度で超高齢社会に突入した日本では、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が27.7%(出典:総務省 人口推計、2017年9月現在)となった。2012年には高齢者の7人に1人が認知症になっており、2025年には5人に1人になると推定されている(出典:平成29年版高齢社会白書)。

 しかも、これまでの研究で認知症の原因となる脳の加齢変化は、ほとんどの人に起きることも分かってきた。精神科医で国際医療福祉大学大学院特任教授の和田秀樹さんは「私が以前勤務していた浴風会病院では、亡くなった人の約半数を解剖していたが、85歳を過ぎて脳にアルツハイマー病の所見の全くない人はいなかった」と話す。認知症は、皮膚にシワができたり、髪が白くなったりするのと同じレベルの老化現象の一つなのかもしれない。

 私たちは、天寿を全うしようとすれば、最終的には認知症にならざるを得ない。「いつかは『ボケる』ということを前提に、早め早めにライフプランを立てておくことが大切だ」と和田さんはアドバイスする。

要介護の節目となる年齢は75歳から85歳へ

 いま40代の人が、人生後半戦のライフプランを立てようとするとき、節目となる年齢はいくつか。いわゆる「後期高齢者」と呼ばれるようになる75歳なのだろうか。この75歳という基準は、人類学者で老年学を専門としたシカゴ大学教授、ベルニース・ニューガートンが1974年に「75歳までは、ほとんど介護を必要としないし、高齢者特有の病気も少ない。分かれ目は75歳からだ」という考え方を発表したことをきっかけに設けられた。しかし、それから40年たった今では、介護が必要となる高齢者の境目は、より高くなっている。

 和田さんは「日本の年齢別要介護率を見ると、85歳以上の要介護者発生率は約5割にのぼる(出典:厚生労働省「介護給付費実態調査」、平成29年)。体が不自由になったり、認知症を発症して介護が必要となる年齢として、85歳が一つの節目になるといえそうだ」と解説する。実際、現在の介護問題は、後期高齢者になる75歳よりさらに10歳上の85歳以上の人口が爆発的に増えていることが最大の要因なのだ。

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