「ティール組織」が目指すもの

 「細かな管理をされなくても、個々人が組織の存在意義と目的を常に意識し、自ら役割を自覚し、協働し、主体的に意思決定し、日々進化しながら動く、柔軟で生命力に溢れた組織」

 これが、私にとってのティール組織の定義です。

 「ティール組織」の中で、著者のラルーは、組織を以下の7つの発展段階に分類し、その最も進化した形を「ティール組織」と呼びました。

 (1)無色(血縁関係中心の小集団)
 (2)神秘的<マゼンタ(ピンク)、数百人の部族型>
 (3)衝動型<レッド、数百人から数万人の規模、力や恐怖による集団支配>
 (4)順応型<アンバー(琥珀色)、官僚型など、規則、規律、規範による
       階層構造>
 (5)達成型<オレンジ、実力主義や効率性を重視する複雑な階層組織>
 (6)多元型<グリーン、多様性、平等、文化を重視するコミュニティ型>
 (7)進化型<ティール(青緑)、変化の激しい時代における生命体型組織>

 そして、このティール組織が、従来の組織管理の限界を打破できる条件として、以下の3つの「突破口」(ブレークスルー)を掲げています。

 1. セルフ・マネジメント(自主経営)
 指示や命令で動くのではなく、個々人が自主的に経営活動に参加している。階層やコンセンサスに頼らず、同僚同士の助言や協力関係を活かしながら自ら動く。

 2. 全体性(ホールネス、個人としての全体性の発揮)
 誰もが「本来の自分」で職場に来ることができ、自分自身と組織人としての個の間に壁を作らない。同僚、組織、社会との「一体感」を感じながら充実感を持って働ける風土や慣行がある。

 3. 存在目的
 社員一人ひとりが、組織自体が何のために存在し、将来どの方向に向かうのかを「常に」追求し続ける姿勢を持つ。存在目的が、個々人の意思決定や判断に重要な影響を与えている。また、存在目的自体が生命体として進化している。

 ティール組織は、いわば、従来型の指示、命令、ノルマによる「管理」を完全に手放した組織です。社員の自主性や自発性をベースに動くので、世の中の変化に合わせて自分たちも自ら「進化」することが可能になります。組織階層という分厚い鎧から人間を解放することで、人間が本来持つ知恵、知識、能力、発想、協働性といった力が発揮されることを目指します。

ティール組織に感じる「懐かしさ」

 私は、上述の「ティール組織」を読み、その豊富な事例リサーチや深遠な考察に感銘を受けました。また一方で、どこか「懐かしい」感覚を覚えたのも事実です。そこで語られている「経営(マネジメント)」の目指す姿が、留学先のクレアモント大学院大学のドラッカー・スクールで学んだ「人間を中心とするマネジメント論」と極めて近かったからです。

 ドラッカーが一貫して目指した経営(マネジメント)も、「セルフマネジメント 」によって社員が自分自身という資源を自ら活かし、「組織の存在意義、目的」に一貫して真摯に向き合う「嘘のない」仕事をすることでした。そうすることで、仕事に対する人のモチベーションや生産性、主体性、協働性、創造性が高まり、持続的に成果が出やすい組織になると考えたのです。何より、そのような経営こそが、人間がもっとも人間らしく活躍でき、社会も幸福にできるモデルだと彼は考えました。

 「Management by objectives and self control(目的の共有と自己規律によるマネジメント)」

 ドラッカーの提唱した経営学の要点を一言で述べれば、この言葉につきます。その組織の存在意義や目的という大きな理念を共有し、その組織の使命感、価値観、ワクワクするゴールイメージを共有できていると、人々は管理されなくても自己規律(自分もしくは、チームメンバー間で自発的に問題解決をして成果を生む)ができるようになります。これらはまさに、上述のティール組織の3つの「突破口」(セルフ・マネジメント(自主経営)、ホールネス、 存在目的)とつながります。