従来の常識であった「管理手法」が限界に

 「あまりにも多くの組織が、人々を中身のない仕事に関わらせ、視野の狭いビジョンに熱狂するよう促し、利己的な目的への献身を求め、人々の情熱を競争に駆り立てる。こうした動きに嫌悪感を示し、不毛な努力に情熱をかけるのはもうやめよう。人生を真剣に生きる、仲間と約束し合うとは、そういうことなのだ」

(『ティール組織』(P324)、
マーガレット・ウィートリー&マイロン・ケルナー=ロジャーズ)

 「ティール組織」の中では、従来型の管理手法が容赦なく批判されています。多くの人が常識と捉えている「仕事」「組織」観について、「それは違う」と訴えかけています。

 ティール組織では、階層的な上下関係や細かな規則、定例的なミーティング、売上目標や予算の設定など、多くの組織で当然のように扱われている慣例の多くを廃棄します。意思決定に関する権限や責任のほぼ全てを一部の経営者層から個々のメンバーに渡すことによって、組織や人材に革新的変化を起こすことが期待されているのです。

 米国の小売業として有名なザッポス社が2014年から導入して成果をあげ注目された「ホラクラシー」(holacracy)は、このティール組織の、具体的な一形態です。ホラクラシーでは、階級や上司・部下などのヒエラルキーが基本的に存在せず、フラットな組織管理体制が最大の特徴です。また、意思決定の権限が組織全体に分散され、組織を構成する個人には役職ではなく、各チームでの役割が与えられます。細分化されたチームに、それぞれ最適な意思決定・実行を行わせることで、組織をスピーディーに、自律的・自走的に統治します。

 形は、日本のリクルート社の「プロフィットセンター(PC) 」モデルや、京セラ創業者の稲盛和夫氏が志向した「アメーバ」経営とも近いかもしれません。情報化の時代に、より大胆な形で経営情報を社内で共有し、個々人にさらに抜本的に権限委譲している形がホラクラシーです。

 ティール組織にせよ、ホラクラシーにせよ、その誕生の背景には、「従来型の組織管理の限界」があります。これまでの「管理」「組織運営」「上司と部下の関係」で当たり前と思われていた方法、数字的成果が実際に上がってきた方法が、実は大きな「副作用」「逆効果のリスク」をはらんでいることが気づかれ始めています。

 例えば、

  1. 強い指示・管理を受けながら仕事をすることで恐れを感じ、心身共に疲弊する
  2. 細かなルールや社内の複雑な人間関係により疲弊し、仕事への意欲を失う
  3. 厳格な業績管理、成果主義により、本来の自分の能力を活かす余地を失う
  4. 受け身で指示されることに慣れ、組織のリーダーとしての素地を養えない
  5. 数字に追われすぎ、無理な営業活動を続けることで、顧客からの信頼を失う

といった「副作用」「逆効果」です。

 これまでも、部分的な解決策は多数発表され、導入されてきました。私自身が所属したコンサルティング業界やIT業界も、これらいわゆる「ソリューション」事業を販売することで発展した業界です。しかし、ティール組織の著者であるフレデリック・ラルーはこう述べます。

 「組織が内部の問題を解決しようとするさまざまな方法は、状況を好転させるのではなく悪化させることが多いように思われる。ほとんどの組織は、事業の変更、合併、集中化、分散化、ITシステム導入、ミッション・ステートメントの作り直しや評価・報奨システムの再構築を何度も経験してきた。現在の運営方法が限界に達したと感じ、こうした従来の処方箋が、解決ではなく問題の一部であるように思えることも少なくない」

(『ティール組織』(P14))