しかし、これは古くからある「モノづくりにおける生産性向上」的な発想から、抜けられていないパターンです。すなわち、「リターン(成果)」がある程度明確にできていた時代の発想から、抜けられていないのです。今問うべき「生産性」の主題は、むしろ分子の「我々が生み出したいリターンは何か?」です。

「私たちが事業で最も自信を持って提供したい『価値』は何だろうか?」
「この仕事は、どんなリターン(つまり、顧客にとっての価値)につながるものだろう?」

 という観点で上司も部下も徹底して話し合って、目指すリターンを再定義してみてはどうでしょうか。最初から結論がバシッと一致しなくても構いません。むしろ、「こんなにイメージがずれているのか」と気づくことになるかもしれません。いずれにせよ、話し合い、少しずつ「目指すもの」の認識を合わせていくことが大切です。

 目指すリターン、すなわち生み出したいものを話しあっていけば、おのずと実施する仕事(インベストメント)も変わってきます。そうすれば、

「そもそも、我々の目指す目的、生み出したい価値を考えると、この業務は、もう必要ないのでは?」
「この会議をやっていても、欲しいリターンは得られないのでは?方法を変えよう」

 という発想が生まれ、結果、本当の意味で「(価値を)生産する」仕事に変わっていくはずです。

職場では、具体的に何を生み出していくのか?

 「私たちは、日々の業務で、削減する、少なくすることにばかり気を取られがちです。仕事の中で、『もっと何かを生み出す』ことを目指すとすれば、具体的にはどんなことが生み出されると良いでしょうか?」

 仮に、ドラッカーにこのようなストレートな問いをぶつけたとしたら、以下のような答えが返ってくる気がします。

「今日の、知識を主体としたビジネス環境で、職場で特に『生産』されるべきものは、以下の5つである。

  1. 顧客が購買したい価値を生む、社員の新しい「アイディア」
  2. 新しいアイディアを実行する「意思決定」
  3. 顧客にとっての価値につながる、充実した「仕事」
  4. これらが満たされることによる社員の高い「モチベーション」
  5. 上記の結果としての、過去より改善された「業績」

いかに数字が上がっていようと、これらが生産されていないとしたら、その組織のマネジメントは正しい方向に向かっているとは言えない」

「生産性」を高めるための条件

 生産性を高めるための「条件」があるとすれば、それは何でしょうか。ドラッカーは、著書の中で、このようなことを言っています。

「成果を上げるための秘訣を一つ上げるならば、それは集中である。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数と種類が多くなる」
(「経営者の条件」)

「並の分野での能力の向上に無駄な時間を使うことをやめることである。強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするためには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする」
(「明日を支配するもの」)