「会社が進めるから」で終始する「働き方改革」で良いのか?

 私は、もしドラッカーが今この場にいたら、「働き方改革」を推進する人たちに、上記の子供と同じような質問をしたのではないかと思います。つまり、

「あなた自身は何者で、どんな強みを発揮して、どんな価値を生み出し、どんな貢献をしたいと思っているのか?」

 という問いです。これら「自分」「強み」「価値」「貢献」といったキーワードは、いずれもドラッカーが頻繁に使っていた言葉です。実際に、私が米クレアモントにあるドラッカー・スクールで初めて生前のドラッカーの授業を受けた時の彼の第一声は今でも忘れることができません。

 「Remember who you are. Take your responsibility.」
(自分は一体何者か、考えなさい。そして、その答えに自分で責任を持つのです。)

 ドラッカーは、組織の前に、まず「自分自身」という資源の活かし方に、自分自身が責任を持つことを強く求めました。「まず自分をマネジメントできなければ、他者をマネジメントすることはできない」と語り、「セルフ・マネジメト」の重要性を訴えていたのはそのためです。

 ドラッカーは、著書の中でも、こう語っています。

 「これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない。」
(『プロフェッショナルの条件』)

「知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく自らをマネジメントしなければならない。」
(『経営者の条件』)

 まさに現代は、組織や事業の寿命よりも知識労働者の寿命の方が何倍も長い時代です。だからこそ、組織の指示を受け身で受け入れるのではなく、「自分自身」という資源を自ら活かし、生涯を通じて複数の事業やプロジェクトで成果を上げていくマネジメントを身につける必要があるのです。それが、長い人生の間に価値ある成果を生み続ける秘訣だとドラッカーは説いています。