年齢を重ねても生産的であるための5つの条件

 最後に、年齢を重ねても生産的であるための条件を5つまとめてみました。これも、ドラッカーの考え方に学びながら、多くの実践者に共通する思考・行動習慣を観察してまとめたものです。

    ①早い時期から、会社以外の場で自分を「相対化」する

     知識労働者の人生を通じた活躍の場は、今の仕事・組織を超えて無限に広がっています。40代や50代の早い段階から、積極的に社外の人と交流し、年齢や職歴を気にせずともに学び、語り合う経験が大切です。そうすることで、閉じた世界の中で「絶対化」していた自分という人間の資源を「相対化」することができ、自分の強み、能力、関心、価値観を探ることができ、人生を通じて追いかけたいテーマも見えてきます。

    ②「自分という資源」の生かし方を決める

     「答えるべき問いは、正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである。」

    (ドラッカー 「断絶の時代」)

     ドラッカーのこの言葉の意味していることは何でしょうか。ついつい私たちは、「自分は何をやりたいのだろう?」と考え続けてしまい、答えにたどり着けません。しかし、「自分を使って何をしたいか?」と考えたらどうでしょうか。自分自身という希少な「資源」に意識を向けることができます。その「自分」という資源を使ってどんな仕事をして行きたいのか、どんな貢献ができるか、と考えることができます。ここから、自分自身が心からやりたい仕事、やるべき仕事も見えてきます。

    ③「捨てる」決断をする

     「忙しい人たちが、やめても問題のないことをいかに多くしているかは驚くべきほどである。楽しくも得意でもなく、しかも古代エジプトの洪水のように毎年耐え忍んでいるスピーチ、夕食会、役員会が山ほどある。なすべきことは、自分自身、自らの組織、他の組織に何ら貢献しない仕事に対しては、ノーということである。」

    (ドラッカー 「経営者の条件」)

     ドラッカーは、年齢を重ねるごとに、「何をやらないか」を厳格に決めていました。限られた時間で生産的であるためには、「何をやるか」以上に「何をやらないか」の意思決定が決定的に重要だからです。これも、自分を相対化し、自分という資源の活かし方を知ることで初めてできることです。

    ④自分を「再教育」(Reeducate) する

     ドラッカーは、生産的であるために、二つの「学習」が必要だと言います。それは「ラーニング(Learning)」と「アンラーニング(Unlearning)」です。最近は、60歳前後で退職された後に大学や大学院で学びなおす人が増えています。前述の池上彰さんもそのお一人でした。このような新しい知識の「ラーニング」と同様に必要なのが「アンラーニング」です。すなわち、自分に染み付いている固定概念や常識の中から、思い切って捨てるべきものを捨てるということです。この「アンラーニング」のためにも、上述のとおり社外に積極的に出て「自身を相対化する」ことが不可欠です。

    ⑤「何をもって覚えられたいか?」に従って日々生きる

     セルフマネジメントにおけるドラッカーの基本的な問いが、「あなたは何によって憶えられたいのか?」という問いかけです。この問いに答えを出せるのは、会社でも、上司でも、家族でもなく、自分自身だけです。年齢を重ねても生産的に仕事をし続けている人は、年を重ねるごとにますます、この問いに誠実に向き合って働いているように見えます。きっと、その一貫した姿勢が、多くの共鳴・共感を集め、賛同者や協力者が増え、結果としてますます仕事が生産的になっていくのでしょう。

(第6回 終わり)