やる気を高める直接的動機とは

 人は、「楽しさ(Play)」「目的(Purpose)」「可能性(Potential)」という直接的動機に突き動かされて働くとき、パフォーマンスが上向く。

 一方、「感情的圧力(Emotional Pressure)」「経済的圧力(Economic Pressure)」「惰性(Inertia)」という間接的動機はパフォーマンスの足を引っ張る。これは、国や性別、年齢を問わない。

 直接的動機はパフォーマンスを高め、間接的動機はパフォーマンスを下げる。つまり、社員が自分の仕事に「楽しさ」「目的」「可能性(仕事を通じて自分も成長する、など)」を最大限感じるようにする一方で、「感情的圧力(人によく思われたい、など)」「経済的圧力(お金のため)」「惰性(何となく続ける)」を最小化する。これが目指すべき社風であり、高レベルのToMoを備えた組織である。

 ちなみに、直接的動機のなかでも、「楽しさ」>「目的」>「可能性」の順にパフォーマンスを引き上げる力が大きく、間接的動機は「惰性」>「経済的圧力」>「感情的圧力」の順でパフォーマンスに悪影響を及ぼす力は強くなる。

 では直接的動機について、1つずつ見ていこう。

直接的動機1●楽しさ
 「楽しさ」が動機であれば、仕事であれ、ダイエットであれ、成功する確率は高まる。人間は本来、学ぶことや適応することが好きなので、無意識のうちに楽しもうする機会を探し出そうとしている。それに応えられるような環境を整えれば、高業績を上げるための最も直接的で強い動機になる。
 好奇心と実験は楽しさの核になる。トヨタは工場の労働者に、組み立てラインで使う新しい道具やアイデアを考案したり試したりすることを奨励する。WLゴア&アソシエイツやグーグル、その他多くの企業は、アイデアを検討するための資金や時間を社員に提供し、仕事を楽しむよう促している。ザッポスやサウスウエスト航空は、社員に顧客との交流を楽しむよう促す。いずれの場合も組織は従業員に、好奇心を発揮して仕事そのものを楽しむよう働きかけている。

直接的動機2●目的
 目的が動機になるのは、仕事自体は楽しくないかもしれないが、それがもたらす結果が重要というケースだ。例えば、看護師なら、患者の苦しみを癒やすという目的が、仕事に励む動機になる。自分のやっていることが人々から感謝される重要な仕事と思えるから、必要な知識を身につけようとする。目的という動機は、パフォーマンスを高める動機になるが、「楽しさ」ほど強い動機にはならない。

直接的動機3●可能性
 3つ目の動機の「可能性」が生じるのは、仕事の(直接の結果ではなく)2次的な結果が、自分の価値観や信念と一致する時だ。つまり、最終的にあなたが重要だと思うもの(個人的な目標など)につながるからその仕事に励むという場合だ。例えば、ロースクールの入学に役立つという可能性に惹かれて、弁護士のアシスタントとして働く人もいる。毎日、書類をとじるだけの仕事は楽しくないし(楽しさという動機がない)、その事務所がどんな人を弁護するかにも関心はない(目的という動機もない)。ただ、将来、弁護士になりたいから、その仕事を続けている。つまり、2次的な結果としての可能性を信じて働いているわけだ。
 可能性という動機は、仕事から2次的にもたらされるため、楽しさや目的ほど強力ではなく、仕事から2歩(あるいはそれ以上)離れている。

次ページ 足を引っ張る間接的動機とは