会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q:職場健診の心電図検査の結果が、2年連続で要精密検査だった。でも、去年と同じ「左室肥大」で、精密検査を受けても異常なしだったので、今年は受けなくてもいい?
A:去年の精密検査で異常なしだったからといって、今年も問題がないとは限らない。経年変化をみるためにも、指示通りに精密検査を受けたほうがいい。
「左室肥大」は、前回のこのコラムで取り上げた「非特異的ST-T変化」と同様に、職場健診の心電図検査でよく指摘される所見の1つ。心臓は「右心房」「右心室」「左心房」「左心室」の4つの部屋に分かれているが、このうち左心室の筋肉が異常に厚くなるのが左室肥大だ。

心臓病・不整脈を専門とする小川聡クリニック院長の小川聡氏によれば、「左心室を取り巻く筋肉の厚さは、1cmまでなら正常、1.2cm以上になると左室肥大と診断されます。ただ、胸板が薄い日本人は、電気信号が体の表面に伝わりやすく、それほど肥大していなくても大きな振幅の波形になることで、誤って異常があると指摘される場合があります。痩せ型の人は特にその傾向があります」という。
心電図検査だけでは、左心室の筋肉の厚さまでは分からない。そのため、正確な判定には、循環器専門医のもとで、「心臓超音波(心エコー)検査」などの精密検査を受ける必要がある。
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