心疾患の症状と5つの危険因子の有無をチェック
職場健診で多く指摘されるのが、先述した通り、波形のST部分に変化が現れる「非特異的ST-T変化」。そのほか心室から早く電気信号が発生して早期収縮が起こる「心室性期外収縮」、左心室の筋肉が異常に厚くなる「左室肥大」なども、比較的多く指摘されるものだという。
「心室性期外収縮は、心臓に異常がない健康な人にたまたま現れることもあれば、突然死の引き金になるような可能性のあるものまで様々です。左室肥大も同様で、例えば、痩せて胸板が薄い人では電気信号が体の表面に伝わりやすく、大きな振幅の波形になることで、異常がなくても指摘される場合があります。ただし、ST-T変化を伴う場合は左室肥大の可能性が高くなるので、注意が必要です」(小川氏)
このような何かしらの所見があった場合には、動悸や息切れ、胸の痛みやもやもや感といった「虚血性心疾患」(狭心症・心筋梗塞)の症状がないか、確認してみよう。「心電図に異常や所見がなくても、自覚症状がある場合はそちらを重視することもあります」(小川氏)
また、虚血性心疾患のリスクとなる5つの危険因子の有無もチェックするとよい。「具体的には、喫煙、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、肥満、糖尿病のいずれかが当てはまれば、今は軽度の異常でも、将来的に危険性があると自覚しておいた方がいいでしょう。特に、これらの危険因子のある人に期外収縮や非特異的ST-T変化が指摘された場合は、一度は循環器専門医の診察を受けておくことをお勧めします」(小川氏)
「要経過観察」の判定であれば過度の心配は無用だが、危険因子があれば生活改善を図り、健診結果を注意してみていくといいだろう。
小川聡クリニック院長、慶應義塾大学名誉教授、国際医療福祉大学三田病院名誉院長

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