放置すれば腎不全につながる可能性も

 富野氏によれば、職場健診の尿検査で「尿たんぱく陽性」と判定された人は、腎性の糸球体腎炎が原因のケースが多いという。腎臓には毛細血管の塊である糸球体が、左右に100万個ずつあるといわれている。この糸球体の中に炎症が起こる病気が、糸球体腎炎だ。

 「糸球体腎炎の場合は、たんぱく尿よりも先に、血尿が現れるのが一般的です。そのため、過去の尿潜血反応の有無も確認した方がいいでしょう。仮に、過去に血尿が見られて、現在は尿たんぱくだけがみられる場合、腎機能が低下していることも考えられ、放置すれば腎不全につながる可能性もあります」(富野氏)。

 「血尿」というと、尿が赤くなるものと思っている人もいるかもしれない。しかし、医学的には、尿に赤血球が混ざっているものを血尿といい、腎臓や、尿が排泄されるまでの尿路のどこかで、出血が起きていることを示している。泌尿器系の病気では、目で見て尿が赤いと分かる「肉眼的血尿」が現れることも多いが、腎臓の病気の初期では主に、肉眼では認められない「顕微鏡的血尿」が現れる。見た目で判断するのは禁物だ。

 血液による腎機能検査に異常がなくても、「尿たんぱく陽性」や「尿潜血反応陽性」と判定された場合は、再検査を受けて、その原因をしっかり調べておこう。

富野康日己(とみの やすひこ)さん
順天堂大学名誉教授、医療法人社団 松和会 常務理事
富野康日己(とみの やすひこ)さん 1949年生まれ。74年順天堂大学医学部卒業。同大学腎臓内科教授、同大学附属順天堂医院副院長、同大学医学部長、同大学大学院医学研究科長などを経て、2015年から現職。医学博士。専門は内科学、特に腎臓病。医師・研究者向けの著作のほか、『自分でできる! 腎臓病カンタン療法80』(学研パブリッシング)、『別冊NHK きょうの健康 慢性腎臓病(CKD)』(NHK出版)など、一般向けの著書・監修書多数。