音は聞こえても、言葉が聞き取れない

 加齢性難聴には、主に3つの特徴がある。1つは、音は聞こえても、言葉が明瞭に聞き取れないこと。「例えば、テレビの音は聞こえても、会話が聞き取りにくいため、ボリュームを大きくしていることを、家族などから指摘されるケースがあります。職場では、会議での会話が聞き取りづらい、理解しづらいといったことで苦労する場合もあります」(池田教授)。

 2つめは、生活習慣病と関連すること。「高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病があると、血のめぐりが悪くなることで耳の中の毛細血管が詰まり、聞こえが悪くなります」(池田教授)。

 そして3つめは、遺伝的な要素。「加齢性難聴のなりやすさには個人差があり、それを決めているのが遺伝的な要素です。親なども50代、60代で早期に難聴になった家系の人は、そこに生活習慣病や騒音といった環境因子が加わると、やはり若いうちでも加齢性難聴になりやすいといわれています」(池田教授)。

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 騒音と聞くと、工場や工事現場などの大きな音をイメージするかもしれないが、池田教授は「日常的な生活環境の中にも騒音はある」という。「例えば、地下鉄の走行時の音も騒音といえます。さらに、地下鉄内でイヤホンをして音楽などを聞く場合は、ボリュームを上げがちになるので、聴力にも影響を与えます」(池田教授)。

 職場健診の聴力検査で特に所見がない場合でも、言葉の聞き取りにくさやほかの検査で生活習慣病の指摘があれば、一度、耳鼻咽喉科で詳しい検査を受けておくといい。

 耳鼻咽喉科では通常、125Hz~8kHzまでの7種類の周波数で調べる「純音聴力検査」と、言葉や単語がどれくらい聞き取れるかを調べる「語音聴力検査」を行い、加齢性難聴かどうかを判別する。

 加齢性難聴を治療する方法はないが、生活習慣病の改善や騒音を避けることは、進行を遅らせることにつながる。「コエンザイムQ10などの抗酸化物質が予防にいいとする研究もされています」(池田教授)。

 聞こえの悪さが進んでくると、言葉が明瞭に聞き取れなくなることで、会話がおっくうになり、家族や友人などとのコミュニケーションも楽しめなくなってくる。「加齢性難聴は、聞こえにくいという日常生活の不便さだけなく、孤独感や抑うつ状態など心理面にも影響することが問題視されています」(池田教授)。

 聞こえの悪さが気になる場合は、耳の病気の有無を確認するためにも、耳鼻咽喉科を受診しておくと安心だ。

池田勝久(いけだ かつひさ)さん
順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座教授、医学博士
池田勝久(いけだ かつひさ)さん 1956年生まれ。81年東北大学医学部卒業後、同大学附属病院耳鼻咽喉科入局。87年ミネソタ大学耳鼻咽喉科留学。89年東北大学医学部附属病院助手、93年同講師を経て、99年東北大学大学院医学系研究科助教授。2003年から現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管食道学会認定医、日本アレルギー学会認定医、日本レーザー医学会専門医、頭頸部がん暫定指導医