会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。

Q  午後の仕事の合間に受けた職場健診の視力検査で視力が悪化。メガネなどで矯正すべき?

A  視力検査は目や体のコンディションが良いときに受けた方がいい。まずは眼科で再検査を。

 職場健診で視力検査を受ける時間帯が選べるなら、その人の目や体のコンディションが良いときに受けるのが望ましい。こう話すのは、表参道内科眼科名誉院長の戸張幾生氏だ。「視力は体調によって違ってきます。仕事の合間の午後に受けた場合は、パソコン作業などで目が疲れていて、よく見えないこともあります」。

 とはいえ、午前中でも寝不足だったり、前日に深酒をしていたりする場合は、視力に影響が及ぶこともある。視力検査を受ける際は、体調が良く、目の疲れも感じていないときがベストだ。

 視力検査を受けたときの目の状態や体調がいま一つで、視力低下も気になる場合は、「眼科で検査を受けてほしい」と戸張氏は勧める。「職場健診の視力検査で視力低下がみられると、メガネ店でメガネを作ろうとする人もいますが、職場健診やメガネ店で行われている視力検査は、簡易視力測定器を用いた簡便な検査がほとんど。正確な視力や見え方の質までは分かりません」(戸張氏)。

職場健診の視力検査では遠視は分からない

 視力検査には、遠くを見るときの視力を調べる「遠見視力検査」と、近くを見るときの視力を調べる「近見視力検査」があり、職場健診では一般的に、遠見視力検査が行われている。

正式な遠見視力検査は、指標(ランドル環)の並んだ視力表から5メートルの距離を取り、片目ずつ、指示された指標の切れ目を読む。(©PaylessImages-123RF)
正式な遠見視力検査は、指標(ランドル環)の並んだ視力表から5メートルの距離を取り、片目ずつ、指示された指標の切れ目を読む。(©PaylessImages-123RF)

 ちなみに、職場健診の視力検査では、近視、遠視、乱視かどうかまでは分からない。これらは「屈折異常」と呼ばれるもので、視力とは別のものだからだ。

 正式な遠見視力検査は、指標(ランドル環)の並んだ視力表から5メートルの距離を取り、片目ずつ、指示された指標の切れ目を読むのが基本。さらに、室内の明るさ、視力表の照度やコントラスト比なども決められている。

 一方、簡易視力測定器による検査では、機器をのぞき込み、片方ずつ、示された指標の切れ目の方向に機器のスティックを倒していくことで、自動測定を行うことが多い。小さいスペースでも検査ができて、簡便に行える利点があるものの、正しい視力や目の病気の有無などを調べるには、やはり眼科での詳しい検査が必要だ。そのうえで、視力の矯正をしたほうがいい場合は、処方箋を書いてもらい、それに合ったメガネを作る。

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