眼圧が正常でも緑内障の可能性が

職場健診の眼圧検査で「異常なし」の判定を受けたとしても、緑内障を発症していることがある。(©Robert Przybysz-123RF)
職場健診の眼圧検査で「異常なし」の判定を受けたとしても、緑内障を発症していることがある。(©Robert Przybysz-123RF)

 職場健診で眼圧検査が行われていて、「異常なしの判定を受けたとしても、緑内障を発症していることもある」と、戸張氏は注意を促す

 「眼球の内圧を測定する眼圧検査では一般的に、10~20mmHgが正常眼圧、21mmHg以上あると高眼圧とされ、緑内障の可能性があるとされています。ところが、日本人の場合、正常範囲で平均的な14~15mmHg程度の眼圧でも、緑内障になる人が多くいます。これは『正常眼圧緑内障』と呼ばれるもので、近年、特に増加が目立っています」(戸張氏)

 眼圧が正常なら、眼球に均等に圧力がかかる。しかし、眼圧が高くなると、視神経乳頭部(視神経が束になって脳につながる部分)という圧力に弱い部分が圧迫されて、視神経が傷つき、障害を起こす。正常眼圧緑内障では、眼圧が正常範囲でも、この視神経乳頭部がへこんだ状態になる「視神経乳頭陥凹(ししんけいにゅうとうかんおう)」が見られることが多い。そのため、視力検査や眼圧検査に異常がなくても、眼底検査でこの初見があれば、眼科で精密検査を受けることが望ましい

 「正常眼圧緑内障を発症する原因はまだ解明されていません。ただ、なりやすい要因は分かってきているので、当てはまる人は特に、40歳を過ぎたら眼科で定期的に検査を受けることをお勧めします」(戸張氏)

 正常眼圧緑内障になりやすい要素は、次の通り。

・親や兄弟など、家系に緑内障の人がいる
・近視が強い
・痩せていて、冷え症がある

 また、視野が狭くなったり一部が欠けたりする視野欠損のほか、「激しい目の痛みや頭痛、吐き気がある」「電灯など光の周りに虹のようなものが見える」といった症状があるときは、急性の緑内障のこともある。その場合はすぐに眼科を受診してほしい。

 緑内障の初期には自覚症状がほとんどなく、長い時間をかけてゆっくりと進行していくことが多い。戸張氏によれば「視神経に障害が起きてから、視野欠損に気づくまでには、5~10年程度かかることもあります」という。

 視野の欠損は、片目で見たとき、視野の中心よりもやや上の一部分から始まることが多いものの、両目で見ていると気づきにくい。特に、正常眼圧緑内障では、片目だけに緑内障が起こることもあり、正常なほうの目が視野の欠損をカバーするため、さらに気づきにくくなる。

 「緑内障で傷ついた視神経は、治療をしても元の状態には戻せません。ですから、できるだけ早く治療を始めて、それ以上の進行を抑えることが重要です」(戸張氏)

 職場健診の視力検査だけでは、緑内障を見極めるのは難しい。中高年になれば、老眼など加齢による変化も起きてくる。そうしたチェックや目の病気の有無を調べるためにも、40歳を過ぎたら、定期的に眼科専門医を受診しよう。

戸張幾生(とばり いくお)さん
表参道内科眼科名誉院長、東邦大学医学部名誉教授
戸張幾生(とばり いくお)さん 1935年生まれ。64年東邦大学医学部卒業。東京大学医学部眼科、東京厚生年金病院、東京都老人医療センター眼科医長を経て、83年に東邦大学医学部教授に就任。2003年より同名誉教授、表参道内科眼科院長。現在は同クリニック名誉院長。日本眼科学会認定眼科医。専門は網膜眼底疾患に対するレーザー光凝固治療、白内障手術。主な著書、監修書に『治し方がよくわかる 疲れ目・目の痛み』(幻冬舎)、『名医の図解 よくわかる緑内障・白内障と目の病気』(主婦と生活社)などがある。
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