そもそも「よのなか科」あるいは山本先生の「教えない授業」が学校で必要とされているのはなぜなのでしょうか。

日本の教育は「意見を育てる」ことには圧倒的に弱い

藤原:教科授業で鍛えられるのは、僕の言う「情報処理力」で、「よのなか科」で学んでもらっているのは「情報編集力」のリテラシーです。

 「情報処理力」とは、国語や数学などの知識や技能のこと。「情報編集力」とは、思考力、判断力、表現力のことで、コミュニケーションリテラシー、ロジカルシンキング・リテラシー、シミュレーション・リテラシー、ロールプレイ・リテラシー、プレゼンテーション・リテラシーです。

よのなか科で育成する力

 授業で「情報処理力」を高めれば自然に「情報編集力」が鍛えられるかというと、そうではない。情報をがんがん子供にインプットしていくと、コップから水が溢れるように自然に子供たちが意見を言うようになるのか。知識をどんどん入れていくとひとりでに自分の意見が言えるようになると思っている人がいるとしたら、それは大きな間違いです。

 問われないと意見は形成できないし、まずは間違ってもいいから意見を言ってみないと始まりません。何度も何度も意見を問いかけられなければ意見を言えるようにはなりませんし、さらにそれを論理的に、ロジカルにしていくためには、やっぱりディベートのようなマナーで鍛えないといけない。

 それから友達が理屈の通ることを言ったときにかっこいいと思う。これが大事。そして、どういうときにその意見はかっこいいのか、どういうときにかっこ悪いのかは、ディベートをたくさん体験しないと分かりません。

 もうちょっと進むと、やっぱり本を読まないときちんとした意見が言えないということや、意見をある程度固めていくためには、自分で意見を書いて、誰かに読んでもらったり直してもらったりということを繰り返さないとだめだと分かってくる。

 日本の教育はこういった「意見を育てる」ことには圧倒的に弱いと思う。インプット重視だから、アウトプットの仕方を教える時間が取れない。本当に大事なので繰り返しますけど、インプットを多量にしていくとアウトプットがひとりでに出るということは絶対にない。僕はそのアウトプット重視の教育メソッドが必要だと思った。端的に言うとそれが「よのなか科」の授業です。

山本:「教えない授業」は、まさに生徒に自立を求める授業です。僕が「教えない授業」を行うのは、自立し、問題解決能力をつけることが、変化の激しい社会で生き抜く力につながると思うからです。

(対談2回目に続く。掲載は10月3日の予定です)

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 2020年度から大学入試が大きく変わることを受け、学校教育が変わろうとしています。キーワードは「アクティブ・ラーニング」。先生が教壇に立って、大勢の生徒の前で一斉に講義を行う授業ではなく、生徒が主体となり、協働して課題に取り組み、解を探っていく授業のことです。
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