統合力を高めるにはどうすればよいか

 では、統合力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。まず、統合力が高かったと思われる代表的な人物を二人挙げます。それは、徳川家康と大久保利通です。

 戦国の世をまとめ上げた徳川家康や、維新の混乱を収束させた大久保利通は、統合力が高かったと考えられます。あまり知られていませんが、利通は家康を非常に尊敬していたそうです。自分が打倒した幕府の開祖を尊敬するなんて、ちょっとおかしな話ですよね。でも、新しい時代をまとめ上げるという点で、家康の足跡が参考になったのでしょう。

 歴史のお好きな方は、ぜひ「統合力」という視点で家康と利通の伝記を読んでみてください。ただ念のため申し上げますが、私は二人を全面的に肯定しているわけではありません。両者ともに、けっこう失敗をしているし、そもそもあまり人気がありませんしね(苦笑)。これまでの世を「ぶっ壊した」織田信長や坂本龍馬のような華々しさがない。豊臣秀吉や西郷隆盛のような人間的魅力もない。武術や学問においてそれほど優秀だったわけでもなく、突出した能力が見当たらない。二人とも、驚くほど地味です。

 この二人に共通しているのは、出身の区別なく幅広く人材を登用したこと。そして、部下や専門家たちの意見にじっくりと耳を傾ける姿勢があったことです。

 家康も利通も、晩年は猛烈に忙しかったそうです。そうした中で、いろんな人の、いろんな意見を聞くのは、たいへんつらいことです。「オレは忙しいんだ。結論から言え!」と怒鳴りたくなるのをグッとこらえる。そのためには、自分のコンディションを常によい状態で維持しなくてはならない。二人とも、健康に人一倍気を配り、精神的にリラックスする時間を大切にしていたそうです。

 たしかに、忙しい、方向性が見えない中で、話を聞くのはつらいことです。目をつぶって、耳をふさいで、「エイヤッ」とやってしまったほうがラク。これを「割り切る」と言います。

 割り切り型のリーダーって、キッパリしていて、カッコイイですよね。小泉純一郎元首相は、その典型です。そのため、リーダーシップを「割り切ることだ」と考えている人も多いようです。でも、このタイプの人は「敵を見つけてやっつける」ことで人気を得ようとする傾向があります。こうしたやり方は、伸びている時代はいいですが、これからの混沌とした時代においては、むしろ危険だと思います。

「専門家になる」のではなく、「専門家から、話が聞けるようになる」

 統合力を高めるために、ぜひお勧めしたいことがあります。新任管理職の皆さんは、部下の話をじっくり聞くだけでなく、さまざまな分野の専門家の話を聞きに行くようにしてください。「専門家になる」のではなく、「専門家から、話が聞けるようになる」ということですね。

 いわゆる、「一万時間の法則」というものがあります。その分野の専門家になるには、少なくとも一万時間は費やさなくてはならない。でも、専門家の話が聞けるようになるのに、そんな苦労はいりません。その分野の入門書を5冊手に入れて、ザッと読んでください。私はこれを「入門書5冊の法則」と呼んでいます(笑)。

 入門書って、その分野を網羅的に理解するのに都合がいい。さらに、その分野の権威と呼ばれる人が監修していることが多く、簡単ではあっても、いい加減なことは書かれていません。ただ、ダイジェストするために偏りがあったりするので、5冊ほど読むことによってバランスをとるわけです。

 読み終わったら、その分野の専門家の講演を聞きに行きましょう。そして、前のほうで熱心に話を聞き、できれば最後に勇気を出して質問をする。終わったら必ず名刺交換に行きましょう。講演をしてみるとわかりますが、前で熱心に聞いている人の顔はよく覚えているものです。そのため、名刺交換の時に、「今日はとても参考になりました。もっと詳しくお話を伺いたいので、またお会いしたいのですが」と伝えると、間違いなくOKがとれます。第8回「依頼をスムーズに受け入れてもらうコツ」と11回「『また会いたい』と思わせる心理メカニズム」でお話しした、「それらしい理由とセットにして依頼する」「言質をとる」です。

 筆者は、このようにして、たくさんの専門家から話を聞いています。ビジネスで中国に進出する時にも、上記のようにして中国の専門家の方とのアポをとりました。このコラムも、数多くの専門家や知人の方々からお話を伺い、その内容を統合して書き上げたものです。

 「割り切る」のではなく、「まとめ上げる」ことを意識すること。そして、若いうちから、幅広い分野の専門家の話を臆せずに聞けるようになること。これが、統合力を高めるポイントです。実際にこれを続けていると、社内外に良質な人脈が増えます。そのため、何かあった際に転職活動で困ることもありません。新任管理職の皆さん、ゼネラリストとしての道を、どうか勇気をもって進んでください。

 最後に、新任管理職の皆さんへ、あらためてエールを送ります。

  1. 時代が変わっていることを認識し、いたずらに恐れないこと。
  2. 相手の良き理解者・相談相手になること。
  3. ゼネラリストとして、統合力を高めること。

 これらのことをお勧めして、筆を置きたいと思います。これまでのご愛読、まことに有難うございました。