深くつき合うコツは「定期的に話を聞いてあげること」

 では、その150人と深くつき合うには、どうすればよいのでしょうか。それにはやはり、相手の良き理解者・相談相手になることです。むずかしく考えないで、定期的に会って話を聞くようにしましょう。人間は、「自分の話を、繰り返し、親身になって聞いてくれる人」を確実に好きになります。ここでは、そのメカニズムについてご説明しましょう。

①自己認知理論

 これは、わかりやすく言うと、「人は、自分の行動を通して、自分の気持ちを理解する」というものです。たとえば、サッカーや野球などで、初めは小競り合いをしていたのが、だんだんヒートアップして大乱闘になったりしますよね。相手に怒りをぶつけているうちに、「ああ、自分は怒っているんだな」と認識して、さらに怒りが増幅していくわけです。すなわち、「怒ると、余計に頭にくる」のですね。

 その他にも、「笑うと、余計に可笑しくなる」「泣くと、余計に悲しくなる」などがあります。俗に「拍車がかかる」と言いますが、「行動に表すことによって、情動がエスカレートしていく」わけです。

 この現象は、いろいろなところで起こります。皆さんは、「初めは、それほどしゃべるつもりはなかったのに、そのうちに気持ちが盛り上がってきて、いつの間にか本音を打ち明けてしまった」ということはありませんか? これも同じように、「話しているうちに、余計にわかってほしくなる」という現象が起こっているのです。

 そして、この「話しているうちに、余計にわかってほしくなる」という現象が繰り返されると、「わかってほしい」というスイッチが入りやすくなります。しまいには、会えるのを心待ちにするようになります。だからこそ、定期的に会って話を聞いてあげることが大切なのです。

②認知的不協和理論

 これは、「自分が矛盾を感じるような情報を、無意識のうちに否定したり捻じ曲げて解釈したりする」というものです。この現象は、背伸びして高級品を買った人などによく見られます。

 たとえば、頑張ってベンツを買ったとします。ちょっと背伸びして手に入れたベンツは「やっぱりいい車だ」と思いたい。そうすると、無意識のうちにベンツを否定するような情報を聞こうとしなくなります。さらに、他の高級車よりもベンツが優れているところを一生懸命探して、「自分の選択は正しかった」と自らを納得させようとします。余談ですが、こうした心理によって、一般に高価な車ほど購入後の満足度が高くなります。

 同じように、自分の良き理解者・相談相手が、悪い人だったり無能な人だったりしたらイヤですよね。やはり、「いい人だ」「優秀な人だ」と思いたい。そうすると、悪い情報には目をつむり、良いところを一生懸命探して、自分を納得させようとするのです。

 この認知的不協和は、とても強力な作用があります。一度、自分自身に「この人はいい人だ」「優秀な人だ」と思いこませてしまうと、それを否定するような情報を受け付けなくなります。たとえば、その人に対する悪い話を聞いても、「彼の良さは、パッと見ではわからないよ」「まだ世の中が遅れていて、彼の良さが理解できないんだ」などと曲解してしまいます。

 結婚詐欺や高齢者を狙った投資詐欺などは、この心理メカニズムを悪用しています。詐欺師たちは、初めのうちターゲットに定期的に会って親身に話を聞くことに徹します。そうして、「この人はいい人だ」と思い込ませてしまう。その後に、ゆっくりと詐欺行為を働きかけます。こうなると、周囲の人が注意したところで、まったく効果がありません。常識では考えられないような被害額になるのは、それだけ被害者が詐欺師を「いい人だ」と信じ込んでいるからです。中には、犯人が逮捕された後でも、「でも、あの人はいい方でしたよ」などと言うお年寄りもいます。「定期的に会って話を聞く」というのは、それだけ強い効果があるのです。