若者の失敗に対して不寛容な社会

 これは筆者の個人的な感想ですが、現代社会は若者の失敗に対して昔よりも不寛容になったように思います。元気がよすぎてハメを外したり、ムキになって相手を怒らせたり、危ないと言われているのに近づいて火傷を負ったり、これまでと違う道を行こうとして迷子になったり…等々。子供のころと同じく、社会に出てからも、人はこんな失敗を繰り返しながら成長していきます。

 昔は、こうした試行錯誤をしている若者を、ニコニコしながら見守ってくれる大人がいたものです。しかし最近は、ニコニコするよりも眉をひそめる人のほうが多くなったのではないでしょうか。あるいは、危なっかしいからと規則を作って縛ろうとする。それだけ、社会に余裕がなくなってきたのかもしれません。

 若い人を育成するコツは、なるべく早いうちにたくさんの失敗をさせることです。そして、さらに大きく伸ばすには、致命的にならない程度の失敗をたくさん経験させること。新任管理職の皆さんだけでなく、周囲を取り巻く我々ベテランも、こうしたことを再認識しておく必要があるように思います。

「一人前」とは何か

 ここで、「一人前になる」ということについて、あらためて考えてみましょう。なんとなく、「周囲の人に面倒をかけなくなることだ」と考えがちですよね。とくに日本において、この考え方は根強いと思います。でもこれ、間違いというか、とても問題のある考え方です。何故かというと、「面倒をかけない」ことが目的になってしまって、周囲に相談したり協力を求めたりできなくなるからです。

 実際に仕事で成果を出している人って、けっこう周囲の人に面倒をかけていますよね(笑)。まあ、面倒をかけるとは言わないまでも、周囲の人に協力してもらいながら仕事を進めています。ほんとうに優秀な人って、周囲を巻き込むのがうまいんです。だから、若い人には「少しくらい面倒をかけてもいいから、周囲の人に協力してもらいながら仕事が進められるようになりなさい」と言いたいのですが、いかがでしょうか。

 筆者が若いころ、先輩たちから「小さくまとまるなよ」と声をかけられましたが、これって最近聞きませんね。今はもう死語なのかな。でも今は、若い人を育成する側に対して「(若い人を)小さくまとめるなよ」と声をかけるべきなのかもしれません。

 それと、新任管理職の皆さんも「管理職初心者」ですよね。ということは、ご自身も試行錯誤して失敗していいんですよ。自分なりに考えて、部下を育成しようとしたものの、なかなかうまくいかない。これ、管理職だったら必ず経験しています。部下の育成は、実に「おもつらい」仕事です。周囲の人に協力してもらいながら、試行錯誤を続けてくださいね。

 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。これは、山本五十六の有名な言葉です。この言葉には、続きがあるのをご存知でしょうか? それは、
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
というものです。

 この、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば」というのは、まさに私が提唱している「聞くことを主軸とした対話」そのものです。さらに、感謝で見守って、信頼してあげる。ここまでやらないとダメなんですね。いつの時代も、人材育成は大変なんです。

 「やってみせ、言って聞かせて…」の部分だけを取り上げているのでは、山本五十六に「おいおい、話を最後まで聞けよ」と言われてしまいそうです(笑)。

 繰り返しになりますが、現代は「不寛容な社会」になりつつあると思います。そして、何か問題が起こるたびにガイドラインが策定され、がんじがらめの中でビジネスを展開しなければならない。次回は、こうした中でどのように動いていけばよいのか考察していきます。