これ、すごく応用範囲が広いんです。たとえば、部下がクレームを受けて、上司である皆さんが客先に出向いたとします。まずは、状況をきちんと確認したい。でもこういう時に、うっかり「今回の経緯を教えてもらえませんか?」なんて聞いてしまうと、「あなたの部下から聞いていないのか? 社内の連絡がなっていないな! だからオタクの会社はダメなんだよ!」なんて、火に油を注ぐことになりかねません。

 でも、「すいません。誤解のないように、あらためて今回の経緯を教えていただけませんか?」と切り出すと、相手の反応が違うはずです。この「誤解のないように、あらためて」というのも、「それらしい理由」ですね。

 アポイントをとる時にも、「それらしい理由」とセットにして依頼するようにしましょう。たとえば、「資料をご覧いただいて、その場でご意見を伺いたいので、アポイントをいただけませんか」と伝えたら、ほぼ間違いなくアポイントがとれるはずです。「その場でご意見を伺いたい」と言われたら、会うよりほかありませんよね。このような、「それらしい理由」をいくつか用意して、パターン化して使い回せばよいのです。

 皆さんは、心理学を「人の心の裏を読む、ちょっとアヤシイ研究」だと思っていませんか?たしかに、世の中にはエセ心理学というか、いかがわしいものも存在します。でも、地道な検証を通して、人間の特性を明らかにしてくれる素晴らしい研究がたくさんあるんです。これを学んで応用すれば、具体的な成果がたくさん得られます。

 とはいえ、一般の方が心理学を基礎から学んで実務に活かすのはたいへんですよね。そこで私は、こうしたコラムの執筆や研修の開発を通して、たくさんの方が心理学の知見を実務でスムーズに活かせるように橋渡しをしたいと考えています。

 今回は、若手のセールスパーソンを題材に取り上げました。いつの時代も若手の育成は大きな課題です。最近はとくに「若手に負荷がかけられず、なかなか一人前に育てられない」ことが大きな問題になっています。次回は、この点について考察します。