ここまでのお話で、聞くことの大切さはよく理解していただけたと思います。しかし、「相手の言うことを何でもかんでも聞いていると、振り回されてしまって仕事にならない」という事態になりかねません。実は、一般的にイメージされる「傾聴」と、私が提唱している「聞くこと」は少々異なります。今回は、この点をお話ししていきます。

コミュニケーションの目的は「合意を形成すること」

 ここで、あらためてコミュニケーションについて整理しましょう。コミュニケーションの語源は、ラテン語の「communis(共通の)」「communio(交わり)」「munitare(舗装・通行可能にする=なめらかにする)」からきています。そこで私はコミュニケーションについて、「情報のやり取りと共に、情緒的なやり取りを通して、合意を形成していくこと」と定義しています。

 コミュニケーションが良好な状態とは、「合意が形成されやすい状態」のことです。実際に、何かをやろうとする時、すんなり合意がとれると「この人とはうまくいっている」と感じます。逆に、なかなか合意がとれないと「あの人とはうまくいかない」と感じますよね。

 ビジネスは、すべて合意の形成で動いています。マネジメントや営業活動、開発や管理など、すべての業務は、「人と人、企業と企業の間で、何らかの合意が形成される」ことによって進んでいくのです。この合意がスムーズに形成される状態にある時、「ビジネスがうまくいっている」と言えるわけです。

 それから、対話はコミュニケーション手段の一つであり、「会話によって合意を形成する行為」です。単なる「おしゃべり」とは違うのです。そして、対話力とは「会話によって合意を形成する能力」のことを言います。

合意を形成するには、どうすればよいか

 通常、コミュニケーションスキルというと、「伝える力」をイメージしがちです。実際に、多くの企業は社員教育に「伝える力」の研修を取り入れています。しかし残念ながら「伝える力」だけをいくら鍛えても、コミュニケーションは良好になりません。双方が伝えることばかり考えていると「対話」ではなく「言い合い」になってしまいます。これでは、スムーズに合意が形成されるようにはなりませんよね(苦笑)。