では、これから求められるマネジメントスタイルとは?

 すでに、日本は人口急減・多様化社会が始まっています。こうした世の中では、顧客のことを深く理解して、それに柔軟に対応することが必要です。私見ですが、これからの時代は「抽象と具体をつなぐマネジメントスタイル」が求められると考えています。

 経営者は、理念・方針をトップダウンで下ろします。これは抽象的な内容ですよね。一方、顧客に近い現場からは、「こういう課題をもつ企業があるので、当社のサービスをこのようにアレンジして提供したい」などと具体的な実行アイデアが上がってきます。マネージャーはそれをよく聞いて、理念・方針と合致しているかどうか判断します。そして、OKであれば、「なんとか形にしていこう」とアシストしていきます。理念・方針と実行アイデアをつなぐわけです。

 こうした動き方は、これまでの「管理職」のイメージとは少し違いますよね。私はこれを「触媒役」と呼んでいます。触媒というのは、化学反応の際に、それ自身は変化せず、他の物質の反応速度に影響を与える物質のことです。たとえば、白金は水素ガスと酸素ガスを反応させて水を生成する速度を高めます。ビジネスにおいても、マネージャーという触媒役がいることによってメンバーの仕事が加速するのが望ましいわけです。

 「管理・監督」は、マーケットがどんどん伸びて湧き上がる時代に、メンバーが好き勝手をして脇に逸れたり悪いことをしたりしないようにする行為です。これからの時代は、放っておくと縮小する時代ですから、こうしたことをやると「せっかくのビジネスの芽」を摘んでしまうことになりかねません。これからのマネージャーに求められるのは、「管理・監督」ではありません。「触媒役としての機能」です。

触媒役として大事なことは「興味深そうに聞くこと」

 では、触媒役として機能するにはどうすればよいのでしょうか。それが「聞くこと」なのです。こういうと「ああ、コーチングね」とわかったような顔をする人が多いのですが、そんなに難しいことをしなくて結構です。「部下のアイデアを、ただ興味深そうに聞いてあげればいい」のです。

 おそらく、これを読んだ人は「ただ興味深そうに聞くなんて、そんな簡単なことでいいのかな?」と疑問に思われるかもしれませんね。でも、「マネージャーが部下のアイデアを興味深そうに聞く」って意外なほどビジネスの現場で行われていないのです。「聞くこと」は本当に万能薬ですから、これをきちんと実行すれば部下が元気になるなど様々な効果が得られますよ。

 興味深そうに聞くことで見事に触媒役を果たしている、わかりやすい例を挙げましょう。それはタモリさんです。若い方はご存知ないかもしれませんが、タモリさんは元々強い個性の芸風で、あまりお昼の時間帯に向いている方ではありませんでした。それが、「笑っていいとも」という番組のMCに抜擢され、試行錯誤しているうちにガラリと変わったのです。

 「笑っていいとも」は、生番組として長寿だったことで有名。そこから数多くの名コーナーが生まれ、たくさんのスターを輩出しました。この番組で、タモリさんは「俺が・俺が」と引っ張るのではなく、各コーナーをそれぞれ担当するタレントさんたちに任せて、その個性を活かしながら番組を作り上げていきました。その際にやっていたのが、「興味深そうに聞く」だったのです。笑っていいともの映像を見ていると、タモリさんはまったく司会者っぽくありません。各コーナーでは他のタレントさんたちと同じ場所に立ち、一人の参加者として笑っているシーンが多く見られました。

 最近は、「ブラタモリ」という番組が人気です。この番組も、タモリさんが「興味深そうに聞く」ことで成り立っています。とても博識な方ですが、それをひけらかすのではなく、地元に詳しいガイドさんの説明を聞くようにしています。ガイドさんも、タモリさんに興味深そうにされると、ついつい頑張って説明をします。このお話が実に面白いわけです。

 さらに、知識をあまりおもちでない(失礼!)アシスタントの女性アナウンサーにも話をふって、これも興味深く聞いてあげる。ちゃんと存在を認めてあげているわけです。そのため、彼女らも肩ひじを張らずに個性を活かすことができる。この番組は女性アナウンサーの登龍門になっていて、皆さん番組卒業後に活躍されています。触媒役としてのタモリさんは、本当に素晴らしいといつも感心して見ています。

 部下にとって、上司が自分の話を興味深そうに聞いてくれるのは、それだけで嬉しいこと。聞いてもらうことで考えがまとまったり、気持ちが整理できたりします。せめて週に一回10分程度でいいですから、部下の話を興味深そうに聞いてあげてください。最近では、「1on1ミーティング」と呼んで制度化する企業も増えてきました。とてもお勧めですので、さっそく実践してみてくださいね。

 今回は、ここ数十年のマネジメントスタイルの変遷を見ました。次回は、「世代間ギャップ」について見ていきたいと思います。私たちは、世代によって「まったく異なる風景」を見ています。そのことを理解しないと、いつまで経っても「わかり合えない」ことになります。そこで、どのような世代間ギャップがあるのかを認識し、「では、どうすればよいのか」を考察していきます。

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