現在、大手企業で営業本部長クラスに上り詰めている人たちの中には、このような「優位性を活かした営業スタイル」の成功体験を、いまだに強く抱き続けている人がたくさんいます。彼らは、部下たちの動きを見て「弱い営業で情けない」「もっとクロージングを強くしろ」などと発言します。しかし、このような人たちは時代の変化が理解できていないのです。

 彼らが一線で活躍していた頃と違い、現代はネットを通じて情報が拡散しています。よほど特殊な商品や業界でない限り、知識や情報の面でセールスパーソンが顧客に対し優位性を保つのは難しくなりました。また、購買活動の一元化・最適化が進んでおり、強いクロージングをしたところで効果がなかったり、逆に疎まれたりすることが多くなりました。

 上司・部下の関係でも同じことが言えます。現代は、技術の進歩が目覚ましいため、上司よりも部下のほうが詳しいことがたくさんあります。さらに、地位の優位性をヘタに使うと「パワハラだ」と受け取られる危険性があります。昔のように、「上司としての優位性を行使して部下を動かす」のは現実には難しくなってきているのです。

ビジネスで必要とされるコミュニケーションスタイルの変化

 では、「わかりにくい時代」「人を動かすのが難しい時代」に適応するにはどうすればよいのでしょうか。実はシンプルな話で、「わかりにくいのだから、もっとわかろうとすべき」なのです。すなわち、これまでよりも相手のことをよく理解しようと努力するのです。

 皆さんは、自分のことをよく理解してくれて、何でも相談に乗ってくれる人がいたら、その人のことを大切に思うでしょう。そして、その人が自分にアドバイスをしてくれたら、真剣に耳を傾けますよね。つまり、相手の良き理解者・相談相手になることができれば、それほど説得力・提案力・指導力がなくても相手を動かすことができるわけです。

 これからの時代のビジネスコミュニケーションで大切なのは、「優位性」よりも「関係性」です。新任管理職の皆さんは、ぜひ「顧客や部下の良き理解者・相談相手になる」ことを、ハッキリと意識して努力するようにしてください。その上で提案や指導をすれば、相手は必ず聞く耳をもってくれますから。

 ただし、単に「仲良くなればいい」と言っているわけではありません。この点は誤解しないでいただきたいところです。ビジネスでは、相手のことをよく理解せずに、表面上だけ仲良くなっても意味がありません。また、「コミュニケーションにおいて、優位性よりも関係性が大切だ」ということであって、「商品やサービスの優位性は必要ない」と言っているわけではありません。

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 ここで、あらためて、自分の活動を振り返ってみてください。皆さんは、「相手のことを理解する」「自分のことを理解してもらう」のどちらにより多くの労力を費やしていますか? もし、「自分のことを理解してもらう」ことにばかり一生懸命だったら、少し動き方を改めてくださいね。

 時代が大きく変わってきているのに、変化に対応しようとせず、これまで通りの動き方をしている。これでは、いくら頑張っても仕事がうまく進まないのは当然ですよね。「決死の覚悟で、まったく新しいことを始める」必要はありません。少しだけ「努力を振り向けるポイント」を変えればいいのです。コミュニケーションに関しては、「これまでよりも、相手を理解することに労力を費やす」ことを意識するようにしてください。

 ここまで読んできて、「そうは言うけど、本当かなあ?」「そんなに時代は変わっているのかなあ?」と疑問をもたれた方もいらっしゃるかと思います。でも、たしかに世の中は大きく変化しているのです。極端なことを言うと、実はこれまでの経験が役に立たないほど世の中は大きく変化しています。次回以降は、そうしたお話をしながら、コミュニケーションの分野において、「では、どうすればよいのか」について考察していきたいと思います。

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