「上司・部下」という関係は、以前は言葉通り上下の関係でした。しかし、今は上司より部下のほうが優れていることがたくさんあるし、上から目線でものを言うとパワハラだと受け取られる危険もあります。求められるコミュニケーションスタイルが変わってきているのです。今回は、この点について考察していきます。

新任管理職の皆さんに、希望と勇気を与えるお話を

 本コラムでは、新任管理職の皆さんに向けて、コミュニケーションに関するアドバイスを提供します。現代は、多様化・複雑化が進んだり、人口減少やマーケットの縮小が始まるなど、困難な時代だと言われています。こうしたタイミングで、新たに管理職に任命されるのですから、何かと不安ですよね。そんな皆さんに、希望と勇気を与える話をたくさんお伝えしたいと考えています。

 私はコミュニケーション・コンサルタントとして、数多くの企業を訪問し、様々なご相談をいただいています。抱える課題は企業ごとにそれぞれですが、その背景には共通するものが二つあります。一つ目は「以前と比べて、わかりにくい時代になった」ということ。もう一つは、「人を動かすのが難しい時代になった」ということです。これらが、「困難な時代だ」の元凶ですね。

多様化・複雑化が進み、「わかりにくい」時代

 皆さんは、「いつかはクラウン」というフレーズを聞いたことがあるでしょうか? 1980年代の初めにCMで使われた名コピーです。当時はこの言葉通りに、小型車から徐々にサイズアップして、いつかはクラウンに乗りたいと憧れていた人が本当に多かったのです。実に「わかりやすい」行動パターンですよね(笑)。

 しかし、現代はどうか。車に対する考え方は「人それぞれ」になったと思います。クラウン以上の高級車に憧れている人もいれば、車は動けばそれで十分と思っている人もいます。さらに、車は必要ないと思っている人も多いことでしょう。これもひとつの多様化の表れです。

 私は個人的に、以前の「皆が同じ方向を見ていた世の中」よりも、現代の「人それぞれの世の中」のほうが好ましいと思っています。とはいえ、人それぞれである社会は、それだけ「わかりにくい」社会とも言えます。

 個人だけでなく、企業の活動もわかりにくくなりました。昔は業界の二番手・三番手企業は、トップ企業の背中を見て経営していたものです。だから、似たような企業が多かったし、実際に業界ごとに一括りにして理解することができました。しかし、今は企業経営において差異化を図ることが当たり前になり、各社とも同業他社と違う特徴を出そうとして懸命な努力をしています。「同じ業界だから」と一括りにするのは難しくなり、それぞれの企業をよく見なければ理解できなくなりました。

優位性で人を動かすのが難しい時代

 これまでのビジネスコミュニケーションでは、「人を動かす」というと「説得力・提案力・指導力を発揮して……」というスタイルがすぐにイメージされました。これは、相手に対して何らかの優位性をもち、それを行使することで人を動かすコミュニケーションスタイルです。

 たとえば、上司は一般的に部下よりも仕事に詳しく、さらに地位の優位性があります。また、かつてのセールスパーソンは、顧客よりも製品知識や業界情報などで優位性がありました。実は、説得力・提案力・指導力は、「優位性のある者が、その優位性を活かして相手を動かす」行動をスムーズに進めるためのスキルなのです。