昔話・自慢話は、逃げないで聞こう

 ここからは、「相談」にかかわらず、上司との対話について考えます。上司の昔話や自慢話をどう聞くかは、部下にとって悩ましい問題です。「言いたいことだけ話し散らかす人に対処する方法」の回に書いたように、押し黙って聞いてしまうと、上司は好き勝手に話し散らかします。できるだけ、興味をもって反応を示しながら聞いていきましょう。

 上司をライフストーリー・インタビューの練習台にするつもりで聞いてみるのもお勧めです。そうすれば、インタビュースキルが身につくだけでなく、上司の人生経験を共有することができます。

 私自身も、数多くの上司に仕えてきましたが、彼らの昔話や自慢話を積極的に聞くようにしていました。上司としても、自分の話をきちんと聞いてくれる部下は可愛いものです。別にお酒に付き合ったり無理に取り入ったりしなくても、上司の話をきちんと聞くようにするだけで、関係を良好にすることができるわけです。ものは考えようですね。

視点取得を意識してみる

 もう一つ、上司と対話する時には「視点取得」も意識してみてください。上司の生きてきた時代背景からすると、現在の状況をどう認識しているのか。そして、上司が置かれた立場になってみると、どういう風景が見えているのか。そんなことを意識してみましょう。

 特に、上司が置かれた立場を理解するのにお勧めなのは、実際に上司の席に座ってみることです。休日出勤をした時など、チャンスがあれば試してみてください。「上司の席から見ると、自分たちはこのように見えているのか」という、新たな気付きが得られることと思います。これは、自分が上司になる時に向けての予行演習にもなります。

 また、一人の人間としての上司に興味をもつことも大切です。出身、経験・経歴、家族関係、趣味・嗜好、そしていわゆる出世レースの状況など、上司に関する様々な面に興味・関心をもつことで、より視点取得が容易になります。

指示・命令・指導の背景を考えてみる

 ある程度、上司の視点がわかってきたら、上司が出す指示・命令・指導の背景を考えてみましょう。指示・命令・指導の背景がわかるようになると、自分自身が動きやすくなります。また、上司も、細かいことを言わずに済むのでラクになります。

 背景って、直接聞くのは難しいものです。上司からすると、指示・命令・指導を下した時に、部下から「その背景を教えてください」と言われたら、「うるさい。黙ってやれ!」と言いたくなります。ですから、常日頃から視点取得を意識して上司の話を聞き、指示・命令・指導の背景を考えるようにするのが得策です。

 豊臣秀吉が織田信長に仕えていたころ、「上様だったら、どう考えるか」をいつも想像して先回りして動いていたそうです。まさに信長の視点を取得しようとしていたわけですね。「そろそろ自分に指示が下るだろう」というタイミングであらかじめ登城し、信長が「猿を呼べ」と言った途端にツツッと床を滑るようにやってきて平伏する。そして、「例の件だが」と言うだけで「承知しました」と答える。他の荒くれ者の武将たちは、こうした動き方を「おべっか」と見下していましたが、信長の視点を取得することは天下取りに向けてのよい訓練になったことでしょう。

 今回も、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次回は、「立場が対立する相手」との対話について考えます。誰でも、クレーム客や交渉相手の話を聞くのは気が重いものです。だからといって、話を聞かずに、ひたすら謝るだけだったり、要求を押し付けるだけだったりでは、まとまる話もまとまりません。そこで次回は、クレームや交渉時にどのように話を聞いていけばよいのかを考察します。