時系列を辿ると話が散らばりにくい

 もう一つ、散らばった話を収束させるよい方法があります。それは「時系列を辿る」ことです。話が散らばっても、「ええっと、さっきはここまで話したよね」と言って、本筋に戻すことができます。警察の取り調べでは、容疑者から事件のあらましを聞き出す際にこの方法を使います。容疑者が、のらりくらりと話をはぐらかそうとするたびに、時系列を辿るようにして話を元に戻すわけです。

 おしゃべりな人と対話する場合も、同じように時系列を辿りながら話を進めていくのが得策です。たとえば、プロジェクトの打合せをする場合、タイムスケジュールを辿るように話を進めていけば、話が脇道に逸れた時に戻しやすくなります。

 ビジネスの話は、物事が動いているわけですから、ほぼ例外なく時系列を辿ることができます。ある採用支援コンサルティングの会社は、顧客との商談時に使うオリジナルのタイムスケジュール表を作成しています。これを使うと、話が脇道に逸れることなく、短時間で有意義な打合せができるそうです。

「合わせ技」を使う

 これまでお話ししてきた、「反応を示す」と「目的や主旨を明確にする」「文脈を共有する」「時系列を辿る」を合わせて使うと、より効果的です。いわゆる「合わせ技」ですね。目上の人と会っている時に、相手の話が本筋からずれていっても、先ほどの阿川佐和子さんのような露骨な表情はしにくいものです。でも、「手もとの資料をチラッと見る」くらいはできるのではないでしょうか。こうすると、話している側も「あっ、本来の主旨から話がずれてきたな」と気付くものです。そのためにも、打合せの時にはシンプルなレジュメを一枚用意しておくとよいでしょう。

 少し難しいですが、相手の息継ぎのタイミングが読めるようになると、「手もとの資料をチラッと見る」行為の効果が高まります。人は、バーッと話し続けていても、必ず息継ぎをするタイミングがあります。肺の中に息がたっぷり入っている状態だと話に勢いがあるので制御するのが難しい。逆に、もうすぐ息を吸おうかという時は勢いが弱まっているのでコントロールしやすくなります。

 相撲や剣道などでは、相手の呼吸をはかります。「息を吐いたタイミングで虚が生まれる」といわれ、どんな達人でもスキができます。ここを狙って技をかけたり打ち込んだりするわけです。同じように、会話の時に相手の呼吸が読めるようになると、話し手をコントロールしやすくなります。相撲や剣道などと同様に、「聞くこと」もしっかりとした技術を身に着けて上達することが必要です。

話の腰を折る

 常識的には、相手の話の腰を折るのは好ましいことではありません。しかし、現実的にはやむを得ない場面もあります。そこで、「相手を不快にさせることなく話の腰を折るノウハウ」をいくつかご紹介しましょう。

 一つは、「相手への配慮を口にする」ことです。相手が延々と話し続けていたら、「ちょっとこの部屋、暑くないですか?」「(日差しが)まぶしくありませんか?」「(飲み物の)おかわりはいかがですか?」などと言って、話を遮ってしまいます。相手にとっては不愉快かもしれませんが、とはいえ配慮されての発言なので怒ることができません。

 もう一つは「自分を悪者にしてしまう」ことです。たとえば、お客様のところに行って、少し雑談をしたら思いのほか話が弾んだとしましょう。もう十分アイスブレークはできたし、時間もないので本題に入りたい。このような時には、「あ、すいません。お忙しいのに。いやあ、お話が面白くてついつい…」などと言って、話を聞き続けている自分を悪者にして謝ってしまいます。悪いのは、延々と話し続けているお客様のほうです。でも、こちらが謝ってしまうことで、角を立てることなく話を打ち切ることができます。