指揮者のように話し手をコントロールする

 実は、話し手は聞き手の反応に引きずられています。聞き手が興味深そうに聞いてくれると、どんどん話そうとするし、ちょっと退屈そうにすると話し続けるのを控えるようになります。サポーティブリスニングの練習では、反応を示すことで「指揮者のように話し手を自在にコントロールできるようになる」ことを目指します。受動的に「話を聞かされる」のではなく、能動的・主導的に「話を聞いていく」姿勢が大切です。

 バラエティ番組や情報番組でMCを担っている人たちは、これがとても上手です。芸人さんやコメンテーターの人たちは、目立ちたいので、どうしても話が長くなりがちです。そのままにしておくと収拾がつきません。そこで、MCの人たちは彼らが発言している時に放置せず、必ず反応を示してコントロールしています。

 私のお勧めは「たけしのTVタックル」に出ている阿川佐和子さんを観察することです。残念ながら、テレビは話している人を中心に映すので、阿川さんが反応しているところはそれほど多く画面に出ないのですが、とても参考になります。

 この番組は、ある話題について対立する二派を両サイドに配置するため、途中から意見が紛糾します。阿川さんは、議論がかみ合っている時は「ふむふむ」という感じで興味深そうに聞いていますが、双方がヒートアップしてわけがわからなくなってくると、ため息をついたりして露骨に面白くなさそうな顔をします(笑)。そうすると、うるさ型の論客の皆さんが話すのをやめてしまいます。見事なコントロールです。

 阿川さんのような力量を身に着けるには、それなりの修練が必要です。それに、上司がお説教をしている時に露骨に面白くなさそうな顔はできませんよね(笑)。でも、「聞き手が反応を示すことによって、話し手をコントロールできる」ということは、ぜひ認識していただきたいと思います。

 ちなみに、みのもんたさんがMCを担当すると、出演者にバランスよくコメントさせて無駄な尺を作らないため、編集の手間がほとんどかからないそうです。これは、そのままコスト削減につながります。MCの力量は、その人が出演することで視聴率を上げられるかどうかだけでなく、スムーズな進行によって編集作業に負荷をかけないという側面もあるわけです。

目的や主旨を明確にする

 会議や打合せなど、あらかじめ準備ができる場合は、話をする目的や主旨をなるべく明確にしましょう。そうすれば、途中で話が散らばった際に本筋に収束させることができます。日本の会議は、目的や主旨があいまいなまま開催されることが多く、結果として「声の大きい人の独演会」に終わるケースがよく見受けられます。目的や主旨が明確でないと、「時間泥棒」が活動しやすくなるわけです。

 取材を行う場合は、「話を聞きたい理由」と「聞きたいことの主旨」をつなぎ合わせて文脈を共有するとよいでしょう。たとえば、お客様に新商品を案内する資料を作るために、商品開発者に取材する場面を考えてみます。この時、何となく取材をしてしまうと、開発者は思いが強いですから自分目線で好き勝手に話をしがちです。

 そこで、「お客様に新商品をご案内する資料を作りたいので、協力してもらえませんか?商品の機能だけでなく、開発の狙いや背景、舞台裏のエピソードなど、お客様に興味をもってもらえそうなお話を、たくさんお聞きしたいんです」と事前に伝えておきましょう。

 こうして文脈を共有しておくと、トンチンカンな回答が少なくなりますし、ゴールが共有できるので、協力的に話をしてくれるようになります。一般に、開発者の人は技術的な細かい話をしがちですが、文脈を伝えておけば「それはお客様に必要ないのではないか」と言って発言を遮ることができます。