筆者は、数多くの企業からご相談をいただいています。そのほとんどが、「厳しい状況だからこそ、何らかの『次の一手』を探している」と言います。たしかに、安易にお金を使うことはありませんが、必要とあらば予算をとって新しいことにチャレンジしようとしています。

 昔のように「景気がよくなるまで、ひたすら経費節減をして耐え忍ぼう」などと考えている企業は一つもありません。筆者は、そのように進行形で理解した上で、「対話力の強化が、『次の一手』になり得るかどうか」をお客様とすり合わせていくようにしています。

 ぜひ、顧客を理解する際には、「過去⇒現在⇒未来という進行形で理解する」ように努めてください。顧客の見え方が、これまでとは変わってくるのではないかと思います。

要望やニーズは「いつの間にか出てくる」

ここまでお話しした

  • (1)しっかりと下準備をする
  • (2)状況を話してくれるのをきちんと待つ
  • (3)話し始めたら、顧客の立場になって親身に状況を聞く
  • (4)顧客の状況を、過去⇒現在⇒未来という進行形で理解する

 という一連の流れがしっかりできるようになると、いつの間にか要望やニーズが聞き取れるようになります。逆に言うと、要望やニーズは、相手の状況をしっかり聞けるようになれば自然と出てくるものです。露骨に聞き出そうとする必要はありません。

 こう言うと、「そんな面倒なことをしないで、要望やニーズだけをポンと聞き出せないものかなあ?」と思われるかもしれません。たしかに、「お客様のご要望をお聞かせください」と聞けば、何らかの返答は得られるでしょう。しかし、こうした安易な方法で聞き出した要望やニーズは、どうしても現実からかい離したものになりがちで、「単なる思いつき」や「身勝手な要求」になることが多いのです。

 よく、「セールスパーソンが顧客の無理な要求に振り回され、それによって社内の人たちが迷惑を被る」ということが見受けられますよね。たしかに、顧客は横暴で理不尽なことを言いがちです。でも、こうした事態に陥るのは、セールスパーソンが顧客の状況を把握しようとせず、要望やニーズだけを安易に聞いているのが原因であることが多いのです。

 もう一つ、要望やニーズだけを聞こうとすることのリスクを挙げます。それは、顧客がポンと伝えてくる要望やニーズは、他社にも同じことを言っている可能性が高いことです。ということは、それを聞いて対応するだけでは、一向に差別化につながらないわけです。冒頭でお話ししたような「この担当者は、私(当社)のことをよく理解した上で商品を提案してくれている」と思ってもらえるようにするためには、やはり辛抱強く状況から聞いていく必要があります。

課題とは何か

 要望やニーズと同じく課題も、顧客からポンと聞き出すことはできません。ちなみに、課題とは「現在の状況と望ましい状態との間にあるギャップ。これを乗り越えたら、望ましい状態になるであろうと思われること」を言います。すなわち、状況、要望、ニーズなどを、すべて聞き出していかないと、顧客の本当の課題は見えてこないのです。