よく、「顧客のニーズを聞き出して対応しよう!」と言われます。しかし、実際にできている人は少数です。さらに、どうすればよいのか教えられる人は、本当に少ないと思います。そこで今回は、顧客の状況、要望、ニーズ、課題などを聞いていくのに必要なノウハウをご説明します。

著者の近影
著者の近影

顧客を理解することが「最強の差別化」

 「差別化」という言葉を耳にしたことがあると思います。では、「差別化」とは一体何でしょうか。どうすれば実現できるのでしょうか。少し考えてみましょう。

差別化とは?

  • (1)「他社の商品との違い」を明確にすること
  • (2)「他社の商品よりも優れている」ことを明確にすること
  • (3)「顧客が自社の商品を選ぶべき理由」を明確にすること

     多くの人は(1)か(2)をイメージしているようです。しかし、他社の商品と違う、あるいは優れているからといって、顧客が自社の商品を選んでくれるとは限りません。本当の差別化とは(3)を実現することです。

     とはいえ、「顧客が自社の商品を選ぶべき理由を明確にしよう!」と言われても、どうすればよいのかわかりませんよね。そこで、一つよい方法があります。それは、顧客に「この担当者は、私(当社)のことをよく理解した上で商品を提案してくれている」と思ってもらえるようにすることです。これは、間違いなく「選ぶべき理由」になりますよね。これができれば、商品の価格が少しくらい高くても顧客はあなたの会社の商品を選んでくれるものです。

     言ってみれば「商品力や価格に頼らない、担当者による最強の差別化」です。セールスパーソンの皆さんには、自社の商品を理解することに加えて、ぜひ顧客を理解する努力も怠らないようにしてほしいと思います。

    まず「下地」を作る

     顧客を理解するためには、やはり下準備が大切です。知識や情報を予め仕入れて、理解するための下地を作っておきます。業界動向や企業概要、プレスリリース、商品情報、そして担当者に関する情報などをよく調べておきましょう。ただ、予備知識を得ただけで「わかったつもり」になってしまうのは困りものです。ネットなどで得た情報を鵜呑みにするのではなく、「本当にそうかな?」と検証する姿勢も忘れないようにしてください。

    状況から聞き始める

     下準備ができたら、顧客の話を聞きに行きます。「まずは、すぐに答えられる質問をする」の回で「質問の順番」についてお話ししました。質問には、「思い出せば答えられる質問」と「考えなければ答えられない質問」があります。状況、要望、ニーズ、課題の中で、状況は思い出せば答えられますが、要望、ニーズ、課題は考えなければ答えられません。そこで、状況から聞き始めるのが適切だと言えます。

     顧客の状況を聞くのは、本来それほど難しいことではありません。「対話相手の「防衛本能」を刺激しない話し方」の回でお話ししたように、人には「わかってもらいたい」という欲求があります。顧客としては、「自分の状況を理解してもらうこと」は適切な提案をしてもらうために好ましいことです。ですから、「よりよい提案をしたいので、最近の状況をお聞かせいただけませんか?」と言って、遠慮せずに堂々と話を聞いていくようにしましょう。

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