「おしゃべりになる話題」を探してみる

 防衛本能に配慮してブレーキを解除したら、こんどは話したい欲求に火をつけてアクセルを踏み込みます。その際に大切なのは、「相手に対して、興味・関心・問題意識をもつ」ことです。どんなに無口な人でも、気難しい人でも、ついつい熱く語ってしまう「おしゃべりになる話題」があるものです。これを探していきましょう。

 商談などの際に、緊張を解きほぐすためにアイスブレークと呼ばれる行為を行います。一般的には、天候などの当たり障りのない話をすることが多いようです。通常であれば、それでも構いませんが、「無口な人・気難しい人」を相手にする場合には、そこにひと工夫加えましょう。

 たとえば、デスクに家族の写真が飾ってあれば、お子さんの話をすると顔がほころぶかもしれません。いい色に肌が焼けていたら、ゴルフやアウトドアスポーツの話をすると、のってくるかもしれません。私の経験では、ある気難しい経営者の方が実はラーメンに目がなかったことを知り、それを話題に振ったところ急に饒舌になって驚いたことがありました。

常日頃から相手に興味・関心・問題意識をもって観察し、どの話題を取り上げるべきか調べておきましょう。ブログ、ツイッター、フェイスブック、インタビュー記事などは、そのための情報の宝庫です。名前を検索すると、何かしらの情報が得られるかもしれません。商談などに出向く際には、こうした準備を怠らないようにしましょう。

「不」に注目する

 多くの人がおしゃべりになる話題のひとつに「不」があります。「不平、不満、不安、不足、不便、不都合、不愉快、不具合」などです。これらは、一度話し始めると、とめどなく出てきてしまうものです。

 「不」を聞き出すコツは、くすぐったいくらいにオーバーに褒めてあげることです。人は無意識のうちにバランスをとろうとする傾向があります。そのため、ある面を持ち上げられると、謙遜して、別の面をわざわざ落とそうとします。

たとえば、「素晴らしいオフィスですね。キレイだし立地もいいし、言うことありませんね」などと持ち上げると、「いやあ、構えは立派だけど、中身が伴わなくてねえ…」などと言いながら「不」を語り始めるものです。

 ちなみに、見込み客が競合他社と取引をしていたら、その競合他社を思い切り持ち上げてみるのもよい方法です。「ああ、A社さんとお付き合いがあるんですか。サービスが洗練されていて、対応も素晴らしいそうですね」などと言ってみましょう。そうすると、「う~ん、実際にはそれほどでもないんだよね」などと言いながら、「不」が出てくることがあります。そうした「不」を聞き出して、それらを解消した提案をすれば、受注につながる可能性が出てきます。

相手の苦労や努力を認めてあげる

 もうひとつ、相手をおしゃべりにする方法があります。人には、「自分の苦労や努力を認めてもらいたい」という非常に強い欲求があります。特に、経営者やプロジェクトリーダーなどトップの立場の人は、「自分の大変さを、もっとわかってもらいたい」と思っています。そのため、自分を理解してくれそうな人が目の前に現れると、欲求が抑えきれなくなって、ついついおしゃべりになる傾向があります。このコツがわかると、一般に「偉い人・すごい人」だと思われている人物へのアプローチがとてもラクになります。このためにも、きちんと興味・関心・問題意識をもって相手を観察し、苦労したり努力したりしているところを見つける必要があります。

ただし、話題の振り方には気をつけましょう。若い人が、ベテランの人に対して「大変さがわかりますよ」などと言うと、生意気に思われる危険があります。「私などには想像もできないようなプレッシャーだと思いますが…」などと表現するとよいでしょう。

 私は、「おしゃべりになる話題」のことを「呼び水」と呼んでいます。呼び水とは、ポンプで水をくむ際に、隙間が空いているとくみ出せないので、そこに入れる水のことです。無口な人・気難しい人には、「呼び水」が効果的です。今回のコラムで挙げた方法以外にも、呼び水になる話題はたくさんあります。ぜひ、「この人の呼び水は何かな?」という意識をもって探してみてくださいね。

 今回も、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。研修をしている時に、二番目に多い質問が、「おしゃべり過ぎて、話があちこちに散らばってしまう人にはどう対処したらよいか?」です。こういう人は、傾聴するだけでなく制御することが必要です。次回は、相手のおしゃべりを制御するために必要なノウハウをご紹介します。

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