編集:私の年収では、とても安い買い物には思えませんので、実感が湧きません。

牧野:そうかもしれない。ただ、これは現実だ。米国人は本当にファッションに気を使わない人が多い。

 ファッションにこだわらないという点では、僕はね、バーバリーの靴を履いている人が嫌いなんだ。

 誤解がないようにいっておくと、僕はバーバリーというブランドが好きだ。それに日本人がよく知っているブランドで、僕の話を理解してもらう上で最適だと考えたので取り上げた。その上で、ということを理解した上で読んでほしい。

 まず、バーバリーは、何から始まったメーカーか知っているかな?

編集:コートですよね。私は昨年、ロンドンでバーバリーのコートを買いました。

牧野:そう。コートだ。バーバリーというブランドの根源はコートにある。服という視点で広げていくと、スーツなども、コートで培った技術や考え方が反映されるだろう。

 僕が言いたいのは、それだけ優れた服を生み出すブランドで、なぜ靴を買ってしまうのか、ということだ。革靴でもそれ以外の靴でも、それらを得意にしているメーカーは世界中にある。

編集:バーバリーが好きだから、頭のてっぺんから足の先までバーバリーで揃えたい、という考えなのではないでしょうか。

牧野:そういうことかもしれないね。ただ、それだけブランドを愛しているなら、どうしてそのブランドについてもっと知ろうとしないんだろう。僕なら、靴は靴屋さんで買うよ。

編集:単純に、ショーウィンドウで見かけた特定の靴が、気にいるデザインだったのかもしれません。

牧野:それは少なくとも僕の周りでは、少数派だよ。靴まで揃えてしまう人に限って、自分はブランド通だと思っている人が多い。そんな人は僕に言わせると、「マグロは大間に限る」と語っていながら、実は味が分からない人だ。大間のマグロであれば、冷凍でも気にしないと言っているのと同じだと思う。

 クオリティやルーツへのこだわりではなく、ブランドさえついていればいい、と。そういう考え方は杜撰だと思うんだよね。

ブランドの情報を現地メディアまで味わいつくす

編集:話を現在の牧野さんに戻しましょう。現在の牧野さんは、どういった基準でブランドを選ばれるのでしょうか。

牧野:商品だけでなく、ブランドそのものを味わいつくすんだ。物事の本質を知るというのが、僕の原理原則だからね。

 昔は、気になったことを調べたいと思ったら、本を探さないといけなかった。知識を得るために必要なコストが膨大だった。

 今ならインターネットでいくらでも調べられる。機械翻訳の技術も進んできたから、海外のブランドを知りたければ現地語の情報を翻訳すればいい。大まかな意味やキーワードは分かる。これだけ興味関心を注ぎ込んで商品の購入に至るから愛着がわくし、良さが伝わってくる。

 そうやって、本当に自分が好きなブランドに出合えるものだと僕は考えているんだ。