編集:話題を牧野さんのファッションに戻しましょう。牧野さんは、どんなブランドのスーツを愛用されてきたのでしょうか。現在愛用されているブランドは、若手会社員が気軽に買えるものではないと思います。

ブルックスブラザーズに憧れた20代半ば

牧野:社会人になり立ての頃は、ブルックスブラザーズに憧れていた。当時はそんなに知識もないから、ブルックスブラザーズが世界で一番良いスーツだと思っていた。

 東京・表参道に当時から店があって、覗いてみては、カッコいいけど高いなと感じていた。

 そんな時、シリコンバレーに出張する機会があった。それで休みの日にニューヨークまで飛んで行って、ニューヨークにあるブルックスブラザーズの本店に行ったんだ。とにかくカッコよかった。

 小説か何かで、ウォール街で働く一流の金融マンはみんなブルックスブラザーズを着ている、なんて話も読んでいたから、とにかく一流になるには、ブルックスブラザーズを着ないとダメだと。それで結局、ニューヨークでオーダーした。それが海外で初めてオーダーしたスーツだ。給料2カ月分くらいだったね。

編集:婚約指輪みたいな例え方ですね。

牧野:それくらい高かったからね。でも、気持ちだけでも周囲から頭1つ抜けたかったんだ。「しっかりとしたスーツを着ている牧野は、デキるやつだぞ」と周囲に思ってもらいたかったのかもしれない。

編集:現在の20代では圧倒的に少数派の意見ですね。牧野さんが若かりし頃でも、給料2カ月分をスーツにつぎ込む方は相当珍しいとは思いますが。

牧野:珍しかっただろうね。でもその効用はあった。着続けるには相応の稼ぎも必要だから、着続けるためにも、今よりも稼がないといけないという覚悟も持てた。

米国のエリートがスーツを選ぶ基準

編集:お話を聞いていると、ブルックスブラザーズのデザインなどに惹かれた、というよりは、米国の一流ビジネスマンが愛用しているから、といった理由が、ブルックスブラザーズを愛用した一番の動機に聞こえます。

牧野:そう。当時は、「やっぱりエリートってブルックスブラザーズを着るんだな」くらいに感じていた。ただ、その後、スーツにのめり込んでいく中で、知ってしまった。なぜ、米国のエリートがブルックスブラザーズを着るのか。あとは、英国やイタリアのブランドを知って、そちらに惹かれていった、というのもあるけどね。

編集:米国のエリートがブルックスブラザーズを選ぶ理由は何なのでしょうか。

牧野:彼らは、ファッションに対する関心が薄いんだよ。

編集:もう少し、説明をお願いします。

牧野:当時の僕のような若造にとっては、ブルックスブラザーズのスーツは高い。しかし、例えばウォール街で働くトップエリートにとってはどうだろうか。安い買い物とは言わないが、一大決心を要する買い物ではない。

 だから、「スーツとかよく分からないけれど、ブルックスブラザーズを着ておけば、恥はかかないだろう」程度の認識だ。要は、服装をまったく気にしていないんだよ。

 彼らがとんでもなくダサいと、当時の僕は気付いていなかったんだ。