この世代の頑張り至上主義の根拠に、自身の経験以外はないんだ。そんなもので説教をされる20代や30代はたまったもんじゃないだろう。経済の先行きは真っ暗で、自社や、自社が属する業界もジリ貧。右肩下がりが当たり前の状態で「とにかく頑張れば報われる」なんて言われても説得力なんてないよね。頑張ったらバラ色なんて嘘だもの。その上、自慢したら怒られる。結果に対する賞賛がない。

 そして、最も尊ばれているはずの努力を積み上げても、それだけでは未来がない。

編集:そんなことを言ってしまうと、さらに若い世代の人たちが目標を見失いそうなのですが。現に私は暗い気持ちになってきております…。

牧野:そんなことはない。僕の言いたいことが伝わっていないようだね。君が考え抜いて、力をつけたり自分が進む道を描けなかったりしたら、間違いなく没落するんだ。この社会は沈んでいく船なんだ。絶対に這い上がるという意思がなければ、ワンルームのぼろアパートにすら住めないようになるかもしれない。ほら、やる気を出さなきゃいけないと思えてこないかい。

没落しないという予測は幻想

編集:理屈は分かるのですが、実感が湧きません。もしかしたら、希望がない世代であるのと同時に、そこまでの絶望的な状態もイメージできない世代なのかもしれません。私の世代には、そこそこのビジネスパーソンとして生きて、結婚するなら共働きで、世帯年収を安定させればそれで十分、という考えが主流だと感じます。ずっと、経済が停滞した状態が続くと思っているのかもしれません。実際、私たちは物心がついてからずっと、停滞し続けています。

牧野:その見通しは残念ながら甘い。既に話したように、主体的に仕事ができるワーカーでなければ、大企業勤務だろうと、一度放り出されたらおしまいだ。名の知れた大企業だって、倒産も大規模リストラもいつ起こるか知れたものではない。つい最近だって、誰もが知っている企業が買収されたばかりだ。安定した企業なんて今の日本にはないんだよ。

 これからの時代、自分や家族が路頭に迷いたくなかったら、大先輩達がそうしたように、考え抜かなければいけない。会社に残るにしても、転職や独立をするにしても、だ。考えて、行動して、実力を伸ばした人だけが、いわゆるエリートとして幸せを享受できる資格を持つことができる。

 そして、これも当たり前のことだが、エリートになったからといって、成功が約束されるわけでもない。エリート同士の競争に敗れれば、それもまた落ちぶれることになる。それでも、実力があれば、別の会社に入ったり独立したりして、再挑戦することは何度でもできるけれどね。

 もちろん、成長や競争だけがすべてではない。全員が働いてトップを目指し続けている社会は異常だ。だけど、能力や適性の見極めが終わらないうちに諦めるのはやっぱりもったいない。せめて30歳を超えるまでは全力で取り組んでから頑張らない生き方を模索しても、遅くはないだろう。