今回から始まるワークスアプリケーションズ代表取締役CEO牧野正幸氏の連載「ジャケットを脱がない生き方」。牧野氏は社員4000人を擁するソフトウェア企業を創り、率いている。Great Place to Work Institute Japan(GPTWジャパン)が実施している「働きがいのある会社」ランキングで1位に選ばれたことがあり、従業員満足度が高い会社としても知られる。
牧野氏の趣味はスーツ。「シャツは本来、下着。人前に晒せない」という服飾史における正統を堅持し、ジャケットを脱いだ牧野氏を見た者はいないという。ここに牧野氏の考え方が凝縮されていると考え、コラムタイトルにした。
これに限らず、自分の言動に一本節を通そうとするこだわりの強さが、牧野氏の能力と魅力の源泉だと編集部は考えた。仕事に限らず、あらゆる分野にわたる牧野氏のこだわりを読者にお届けしたい。
編集:牧野さん、これからよろしくお願いします。私は、取材で初めて牧野さんにお会いしたとき、衝撃を受けました。「残業して仕事をこなすのはズルなんだ」「チャレンジしろと言っておいて失敗を責めるのは矛盾している」といった話について、感情を込めて話されていました。

牧野:そんなことで衝撃を受けているようじゃ困るな(笑) 残業の話なんて単純明快だよ。同じ仕事を8時間で終わらせる社員と10時間かかる社員。どちらが結果を出しているか明らかでしょう。当社のような裁量労働制にせよ、時間勤務制にせよ、会社にとっては前者の方が、仕事ができる人だよね。
編集:その話がきっかけで、私自身の働き方を見直しました。同時に、牧野さんの話を聞きたい人たちがたくさんいると考えました。
牧野:ところで、今いくつですか?
編集:31歳です。
牧野:そんな歳で残業がズルなんて言葉に感動している場合じゃないよ。とにかく努力しなくちゃいけないときだと思うよ。
編集:はっ、はい。頑張ります!
編集:では早速。牧野さんが日本で働いている若い人、もしくはこれから働くことになる学生に一番伝えたいことは何でしょうか。
周りから図抜けることを避けてはいけない
牧野:周りから図抜けた人を目指して欲しい。集団のなかで飛び抜けて優れた人になってほしいということだ。会社の同期が100人いたとしよう。その中で、誰が見ても「コイツが一番だな」と見なされるくらいだ。そこまで評価されれば、図抜けた人材と言えよう。
編集:100分の1ですか。
牧野:もちろんこれは一種の理想論。ただし、100人の中の1番を目指して努力をした人間だけが、いわゆるビジネスエリートになれる。そうして初めて、同期の枠を超えて、先輩や上司を含む全社員の中でトップを争う資格を得ると考えてほしい。結果として、全社員が1000人だとしたら、100~200番くらいまでの先頭集団に残れる。ここに位置できれば実務能力は身についているはずだし、創意工夫をする意識も育っている。どんな会社でもどんなポジションでも成果を出せる人材に育っているはずだ。
野球で例えてみよう。わかりやすい例として、ここ最近で一番成功した野球選手としてイチロー選手を挙げる。甲子園を経験し、プロ野球を経て大リーグでもスタープレイヤーとなった。彼は現役選手や、最近引退した選手の中で一番の出世頭。いわゆる「トップ」だ。
彼がトップだとして、イチローのレベルに届かなかった人が等しく敗者かと言えば、それは違う。大リーグでしっかりと結果を残した選手、日本のプロ野球で1軍に定着し、数千万~数億円の年俸を獲得した選手は大勢いる。彼らくらいまでが僕の考える「トップクラス」。つまり、エリートだ。
逆に言えば、ここまでたどり着けないと、いわゆる「プロ野球選手」にはなれなかったことになる。プロ野球選手ほど過酷ではないが、一般的なビジネスパーソンも同じ仕組みの中で競い合っていることをまずは知ってほしい。
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