筆者たちは、カウンセラーや調停人となる人材の育成と事業を現地化する仕組みづくりを重視している。筆者らが去った後も、現地の人々が主体的に活動を続けられるようにすることが大事だからだ。自分たちが暮らす社会の平和を維持するのは、最終的にはその社会の住人である。

 事業管理や交渉で重要なのが「期待値のコントロール」だ。課題やニーズが深刻なほど、人々は、その事業が自らの生活に劇的な変化をもたらすことを期待する。しかし「復興は一日にしてならず」。期待値に対して現実の成果がすぐに上がらないことに折り合いを付けられない人々は、早々に失望し、事業で発生する些細な行き違いにも不満を爆発させるようになる。

 ここで大事なのは、一時的に険悪な関係になることがあろうとも、事業を開始する前の交渉で厳しい点も詰めておくことだ。そうしておけば、事業を開始した後に「想像したよりずっと成果があった」と感じてもらうことができる。少しでも前に進んでいるという実感が、さらなる復興を目指す気力につながるのだ。

異なる民族の住民が協力して住宅を建設する仕組みを取り入れた。石や木も住民たち自身に調達してもらった
異なる民族の住民が協力して住宅を建設する仕組みを取り入れた。石や木も住民たち自身に調達してもらった

 ケニアで避難民向け仮設住宅を建設した際に、建設作業と一部の資材の調達を住民たちにしてもらうことが自立のために妥当と見積もった。最初の住民たちとの協議は紛糾した。「我々は全てを失った被災者なのにあんたらは鬼か!」と反発されたのだ。だが、事業が終わる頃には住民間で自発的に復興計画を協議し実行することが習慣となり、住民たちは「最初はがっかりしたけれど、結果としてこれで良かった」と話すようになった。

良いロールモデルをつくる

 争いを早期に解決する仕組み作りと並行して、何のスキルも持っていない若者たちを、紛争で被害を受けた人向けのカウンセラーとして育成するプログラムを7年間にわたって実施してきた。貧困と暴力から逃れることができず自暴自棄になっていた若者たちが、社会に貢献するためのスキルと機会を得ることで、自尊心を回復していった。

 いずれのプロジェクトも、現地住民の育成を中心にすえている。こうすることのメリットは、彼ら・彼女らが、後に続く若者や子供たちのロールモデルになることだ。紛争地では、武装勢力の司令官やギャングのリーダーなど「悪い」大人がクローズアップされがち。子どもや若者にとって「良い」ロールモデルが存在しないことが課題となっている。結果として、日々の生活に不満を抱えた若者たちが甘い勧誘の言葉に誘われて、暴力的な集団に取り込まれやすくなる。

 紛争調停人や被害者のカウンセラーという専門家として尊敬を集め、地域のリーダー的存在になっている身近なお兄さんお姉さんは、子どもたちにとって憧れだ。今では、彼ら・彼女らが道を歩いていると、地元の子供たちが駆け寄ってくる姿も見られる。人材育成には時間はかかるが、育った人々が生み出す波及効果は何にも代えがたい。

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