顧客は「買いたい」のではなく「問題を解決したい」

 こちら側が自分たちの商品やサービスを「売りたい」と思っていても、相手の目的は異なることを忘れてはいけません。相手は「買いたい」わけではなく、ただ自分が抱えている問題や課題を解決したいと思っているだけなのです。

 マーケティングの大家、ハーバード・ビジネススクール元教授のセオドア・レビットは、「ドリルを買う人がほしいのは『穴』である」という名言を残しています。ドリルを買う人は、ドリルという機械が欲しいのではなく、穴を開けたいわけで、穴を空けられる便利で安い方法がほかにあれば、別にドリルでなくてもいいわけです。

型通りのものの押し付けになっていないか

 少し僕の話をさせてください。

 昨年、僕の父親が亡くなり、喪主を務めました。葬儀の内容は葬儀会社に任せました。葬儀は粛々と執り行われ、最後に棺の中に、参列者一人ひとりが花を一輪ずつ入れていきました。葬儀ではよくある光景かもしれません。しかし、僕と妹は、花を入れずに見ていました。係の人から「花を入れてください」と言われたのですが、僕は花だらけになっていた棺から花を取り出したい、と思ったのです。

 というのも、実は、僕の父親は毎春、かなり重い花粉症にかかっていました。つらそうにしていた様子を知っている僕たちは、花を入れると父がつらいのでは、と思ったのです。係の人に事情を話し、代わりに父が好きだったフルーツを並べました。

 その時に思ったのは、「そもそも葬儀会社の人が、打ち合わせ時に『お父さんって、どんな人だったのですか』と、こちらの意向をくみ取るしつもんを投げかけてくれていたら、満足度も高かっただろうに」ということでした。

 これはどんな業種のビジネスにも当てはまります。自分たちは「決まり切った、型通りのもの」を、相手の事情や意向をよく踏まえずに押しつけようとしてはいないか、と思い返してみる必要があると思います。

 すべてのビジネスは、「こちら側ができること」と「相手が望むこと」のマッチングによって成り立っています。しつもんを活用して、「相手が望むこと」をもう一度とらえ直してみることが欠かせません。あなたも、ドリルという機械を売ろうとしていることに気づけるかもしれません。