ステップ3 理由を明確にして叱る

 ステップ2で相手の言い分を聴いた上で、いよいよ叱ります。叱るうえで重要なことは、相手の言動がなぜいけないのか、なぜ修正してほしいのかを明確にすることです。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、理由を明確に伝えないまま叱り、新人、若手との信頼関係を失っているケースも多々あります。

■佐藤課長の言い分

●「何を言ってるんだ、9時ギリギリじゃなくて、30分前に来るのは当たり前だろう」
●「俺の新人時代は30分前には出社して、先輩方の机を拭いたもんだ」

 上記の理由を見れば、「なぜ始業時間ギリギリではなく、早めに来ないといけないか?」の理由になっていないことが一目瞭然です。

 鈴木さんも相手は課長ですので、表面的には「はい、分かりました」「申し訳ありません」と返しますが、内心では「いやいや、全然理由になってないでしょ。意味が分からない」だったり、「もう最悪。また昔話かよ。時代が違うよ」などと思っている可能性もあります。

 私たちは、自分が当たり前だと思っていることほど、その「理由」を的確に説明できません。そして、「当たり前」「そうするのが自然」「だってそうでしょ」と思っていることに、相手の行動が反した時ほど怒りが込み上げてきます。

 そして、「若い頃は上司の言うことが絶対だった。理由なんて関係ない。でも上司の言うことに従ったから成長して、今の自分があるんだ。上司には感謝している」と思っている方ほど要注意です。今の若い人は理由がないと動かず、理不尽を嫌う傾向があります。ですので、必ず「なぜその言動を修正する必要があるのか」を明確に伝えましょう。理由を伝える時は、相手が理解しやすい例え話や事例を交えると効果的です。また相手と双方向で会話していくことで、相手の納得感が高まります。

■佐藤課長が明確にすべき「叱る理由」

●「会社の勤務時間っていうのは、サッカーの試合時間みたいなものだ。ユニフォームに着替えて、試合時間にピッチにいるだけで、プロの世界で通用するか? 通用しないような。会社も一緒だ。つまり、9時の始業にはウォーミングアップを終えて、本業に取り掛かれる状態でいることが大事だ。鈴木くんは先週、9時~9時半まで何をやっていた?」

●「もちろん電車が遅れることはあるし、止むを得ず遅刻する時もあるよね。ただ、鈴木君と同じ路線を使っている他メンバーは全員、間に合っているよね。その中で鈴木くんだけ遅刻したら、どう思われると思う?」

 叱るのが下手な方は、このステップ3ができていないケースが圧倒的に多いです。慣れないうちはこのステップ3=叱る理由をしっかりと紙に書いて事前に整理しておきましょう。