ステップ1 事実を確認する

 事実は当たり前に分かっていると感じられるかもしれませんが、意外と間違っていることもあります。また、「自分が捉えている事実」と「相手が認識している事実」が違うこともあり得ます。例えば…

■叱り手(佐藤課長)にとっての認識

●「鈴木くんは先週も朝礼にいなかった。今日も朝礼に遅刻してきた。鈴木くんは遅刻が多い」

■叱られ手(鈴木さん)にとっての認識

●「先週はお客様先へ直行するので朝礼に欠席することになり、近藤先輩に欠席を伝えた。今日は電車が信号トラブルで止まってしまい、なるべく間に合うように別ルートで来たが間に合わなかった」

 こうした認識のズレがあるかもしれません。私たちはつい自分が把握していること、自分から見えていることが正しいと思い込み、それを前提に叱ってしまいます。叱る対象となる事実がズレているまま、頭ごなしに叱りつければ、当然、相手は「何を言っているんだ…」と心を閉ざしてしまいます。まずステップ1で自分が捉えている事実が正しいか?を確認しましょう。これも自分が捉えている事実を紙に書いておくと実行しやすいでしょう。

■佐藤課長が確認すべき事項

●「鈴木くん、もう9時を回っていて、遅刻じゃないか。何かあったか?」
●「鈴木くん、先週も1回朝礼にいなかったよな?」

ステップ2 相手の言い分を聴く

 ステップ1に続いて行うことは「相手の言い分を聴く」です。これはステップ1と一体と思ってもらってよいでしょう。

[ケース1]

佐藤課長:鈴木くん、もう9時を回っているけど、何があった?

鈴木さん:乗っていた電車が信号トラブルで止まってしまい、急いで来たのですが遅れてしまいました。

[ケース2]

佐藤課長:鈴木くん、先週も1回朝礼にいなかったよな?

鈴木さん:あの時はお客様先への直行で近藤先輩にお伝えしていました。

[ケース3]

佐藤課長:鈴木くんはいつも9時ギリギリに来るけど、なんでだ?

鈴木さん:だって、9時始業ですから、9時前に来れば問題ないですよね?

 相手の言い分を聴くことで、叱る対象が変わることもありますし、叱る理由が変わるかもしれません。ケース2のようにこの段階で事実のズレが明らかになるケースもあるでしょうし、ケース1のように相手の事情を掴むことができます。叱られる側も自分の状況を理解してもらったうえで叱られることで、心を開いて受け入れやすくなります。人が行動するには何かの理由や意図、そして、行動を取った背景や状況があります。

 もちろんケース1やケース3のような相手の状況や言い分をすべて受け入れる必要はありません。相手なりの背景があったとしても、修正してもらう必要があれば、叱ることをやめる必要はありません。例えば、「遅刻」という相手の行動は修正してもらう必要があります。ただし、「なぜ遅刻したのか?」について相手の状況を理解したうえで叱ることで、相手が受け入れやすいように叱ることができます。ここは事前に紙に書いておけませんので、紙に「○○さんの言い分」と言い分を聴く枠を作っておくと意識しやすいでしょう。