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子どもを信じて任せた結果……

その息子さんは既に成人式を迎えたそうですが、「子どもを信じて任せる」という方針はプラスに働いたと思いますか。

川島:そう思います。息子だけでなく、成人式に出席した彼の友達を見ていても、自主性を尊重して育てられた子たちの目は輝いているように感じました。

 親が過剰に手をかけず、子どもが選んだ道を信じてサポートに回っていた子たちは、「自分で決めた道を進んできた」という自信をすでに備えているし、周りの意志も尊重する気配りができる。

 息子はこの秋に大学野球を卒業しましたが、最後のリーグ戦では最優秀投手賞とベストナイン賞のトロフィーを持ち帰ってくれました。親バカですみません(笑)。でも、きっと彼はこれからも、自分で自分の道を決めて歩んでくれると信じています。

ちなみに、息子さんが野球を始めたのはご本人の意志ですか。

川島:小学生に入ってから、自分で野球をやりたいと言い出したので、地域の野球チームに入れました。でもその前から遊びで野球はやっていました。

 はっきり言って、これは僕のエゴです。僕自身が野球好きだったから、自然とゴムボールとゴムバットで一緒に遊んでいた。サッカーボールが転がってきたら、息子の目に入らないように蹴っ飛ばしたりしてね(笑)。でも、「チームに入れ」とはひと言も言っていません。実際にやるかどうかは、本人の意志次第だと決めていました。

「子どもに任せ切るのは勇気がいる」という親も多いと思います。川島さんがそこまで子どもの意思を尊重できたのはなぜでしょう。

川島:僕自身の体験が大きいと思います。僕も小さい頃から野球が大好きでリトルリーグに入っていたんですが、当時の監督やコーチは今でいうパワハラ系の指導者ばかりで、子ども心に辟易としていました。

 水を飲まずにウサギ跳びをさせるとか、ムチャクチャなトレーニングをやらされていました。それでも頑張って三軍から二軍へ、ようやく一軍が見えてきたという時に、有名な元野球選手の息子が入団したんです。そうしたら、あからさまな特別待遇で、いきなり一軍のレギュラーになりました。

 納得できなくて大人たちに文句を言ったら、ガツンとやられて。「もうやってられるか」という気持ちで、リトルリーグを辞めました。

 でも、僕はそれでも野球を続けたかったから、同じ気持ちの同級生を集めて独自のチームをつくったんです。今だとそんなことは許されないと思うけれど、子どもたちだけの運営でチームをつくって、僕は監督兼選手。

 自分たちで決めた練習法で、自由に練習してやっていたら、地区予選で優勝しちゃったんです。

自分なりに戦える場を探していく

強烈な成功体験ですね。

川島:この時、思ったんです。圧倒的な権力に真正面から抵抗しても、どうにもならないことがある。絶対に勝てない相手というのはいる。でも真正面から戦わず、戦う場を変えたり、自分なりの武器を見つけたりすれば、突破できることもある。

 人生って、“小さな戦い”の連続ですよね。それは子どもたちも同じで、保育園で、学校で、学童で、塾で、部活で、日常のいろんなところで、小さな戦いに直面している。そして、大人になっても戦いは続くんです。

 戦う時、権力への抵抗勢力となって「正面衝突する」のか「諦める」のか。そのどちらになってももったいないわけで、正面衝突はせず、かといって諦めることもなく、自分なりに戦える場を探していく。

 そのトレーニングとして、やはり「自分で考えて決めてやる」というチャレンジの積み重ねは必要だと思います。親は、できるだけ手を貸さずに見守っていく。