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昔だって「イクボス」「イクメン」は存在していた

社長業と子育て、その両輪に真剣に向き合うために、川島さん自身はどんなことを心掛けていましたか。

川島:まず「仕事と子育ては互いにいい影響を与え合い、シナジー効果を生むものである」と考えるようになりました。そして事実、実践してみるとまさにその通りだと感じるようになりました。

 「子育てやその延長線上にある地域活動などをすると、仕事の能力と成果が高まる」。つまりシナジーな関係であるというのが私の経験値です。

 例えば、子育てを通じて出会う地域の人たちとの交流や、学校のPTA活動を通じて磨かれる調整力・交渉力は、ダイバーシティマネジメントそのものです。子どものスポーツのコーチをした経験が部下育成の本質を学ぶことにつながったこともありました。

 子育てに時間を割くと、どうしても働く時間は減ってしまいます。けれど、その減った分を補うだけの、あるいはそれ以上のインプットがあって、仕事にも還元されました。そうした認識が、子育てに関わる本人も、その上司も共有できるといい。

 理解をうながすためには、その概念だけではなく、たくさんの具体的な事例に触れることが大切です。

 ぜひ管理職の世代にも、この連載を読んでほしいと思いますね。僕が企業の管理職研修などでイクボスについて話をしに行く時には、その企業で働くリアルイクボスに登壇してもらって、身近な事例として共有してもらうようにしています。

世代間のギャップを埋めていけるといいですよね。

川島:僕は、いわゆる経団連系の昔ながらの経営者の気持ちも、よく理解できるんです。「社員が不在にする時間が長くなれば、どうしてもこれまでと同じだけの成果は上げられないだろう」、と。

 長時間労働を前提としてきた人たちが、そんな不安を持つのは当然です。だからこそ、これからの企業の発展に不可欠な発想力や視野の広さ、コミュニケーション力を社外で研修する機会にもなるのだという子育てのメリットを、粘り強く発信し続けていくことが必須なのです。

 それに、50代以上の男性が子育てをしていなかったかというと、決してそうではないんです。単にそれが「見えていなかった」だけという可能性もあります。

 実際、僕が地方に講演に行くと、「いや、本当は私もね……」と小声で打ち明けてくる50代以上の男性は結構いるんです。先日も九州で、ふくおかファイナンシャルグループの経営陣と話をしていたら、そこの常務が「実は私は料理が得意で、支店長時代にも、ずっと子どもの弁当を作っていました」と言っていました。

 「買い物があるから早く帰らないといけないでしょう。でも支店長として成果は出さないといけない。相当、段取りを工夫しました」と。まさに働き方改革の実践ですよね。

50代以上の男性も、本当は子育てをしていたのに、その姿が見えなかった。なぜ見えなかったのでしょう。

川島:やはり「会社に長くいること」が美徳とされてきましたからね。そんな空気の中では、早く帰ることに後ろめたさを感じやすく、自分からわざわざアピールするわけにもいかなかったのでしょうね。

 ただ、本当に実力のある人は、制限があってもしっかり成果を出せるように工夫する。ですから文句は言わせないくらい仕事で結果を出して、今に至っているのだと思います。